デジタル・アート配信制御システム事件

裁判所 知財高裁
判決日 2021年07月29日
事件名 デジタル・アート配信制御システム事件
キーワード 進歩性
着目点 ASPが運営する形態の引用発明とピアツーピアの副引例の組合せが容易ではないとした例
事件番号 令和2年(行ケ)10134号
判決のポイント

争 点

相違点2に係る構成の容易想到性について

裁判所の判断

(1) 本件審決は,引用発明と甲3技術は,送信クライアント,受信クライアント及びサーバとの間でデータ送受信を行う方法である点において共通することから,引用発明に甲3技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たことであるとし,引用発明に甲3技術を適用した発明は,OTTデバイス(ピア1A)から他のOTTデバイス(ピア1B)に対して,「ピア1Bは,ピア1Aに該当のデータの送信を要求する」構成を備える方法ということができ,当該構成は,構成Jの「外部の創作地点から,インターネットを介して,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へと,前記サービス・クラウドの外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」構成に相当すると判断した。

(2) しかし,甲3技術がピアツーピアシステムに係るものである(構成i)のに対し,引用発明は,コンテンツの取込み,自動パブリッシング,配信及び格納並びに収益化等の複合的なタスクが実行可能であるもので,それ自体が主体的にコンテンツの取込みや配信等を行う方法であるものと解されるから,甲3技術と引用発明とは,少なからず技術分野を異にするものというべきである。この点,「送信クライアント,受信クライアント及びサーバとの間でデータ送受信を行う方法」という広い技術分野に属することから直ちに,それらの関係性等を一切考慮することなく,引用発明に甲3技術を適用することを容易に想到することができるものとは認め難い。

そして,甲3に,他に,甲3技術を引用発明に適用する動機付けや示唆となる記載があるとも認め難い。

よって,本件審決における相違点2に係る容易想到性の判断には,誤りがある。

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