ユーザー認証方法事件

裁判所 東京地裁
判決日 2017年08月31日
事件名 ユーザー認証方法事件
キーワード 不競法虚偽事実の告知・流布
着目点 ユーザに送った特許権侵害を知らせる書状が、競合会社の「営業上の信用を害する」と判断された例
事件番号 平成27年(ワ)36981号 平成27年(ワ)17527号
判決のポイント

争点

被告がユーザ等に送った書状(下記内容を含む)は、「営業上の信用を害するもの」に該当するか。

(本書状1)

「パスロジ社からライセンスを受けずに販売されている同様のワンタイムパスワード認証製品を利用されますと,それが特許侵害品である場合は,ユーザーも特許侵害に問われる可能性がありますので,ご留意ください。」,

「※特許発明に係わるサービス・製品を正当な権限なく実施すること(第三者から購入してエンドユーザとして利用する場合や,自社開発により実施する場合も含む)は,特許権侵害となります。」

(本書状3)

「今回,貴社の『ニフティクラウドサービス』の中で提供されているパターン認証のためのパスワード登録システムを拝見したところ,パスロジ社が所有するワンタイムパスワード関連特許(例えば,第4455666号の請求項8)をご使用されていると認識しております…。」

「パスロジ社としましては,貴社が上記特許をお使いになることはワンタイムパスワード技術の普及のためには大変好ましいことと考えております。但し,貴社とは未だ正式なライセンス契約を結んでおりませんので,今回ぜひ正式に契約書を交わしていただきたく存じます。」

裁判所の判断

⑴ 本件書状1及び本件書状2について

本件書状1及び本件書状2の記載内容は,前記第2の1(前提事実)⑺ア及びイのとおりであり,被告の開発したマトリクス型ワンタイムパスワード「PassLogic®」製品及び同製品に採用されている代表的な特許技術の紹介,被告からライセンスを受けずに販売されている特許侵害品を利用した場合にはユーザも特許侵害に問われる可能性がある旨の特許侵害に関する一般的な指摘,並びに,PassLogicの導入又は特許のライセンスに関する連絡先の案内を内容とするものである(甲6,7)。 このような上記各書状の記載内容に照らせば,上記各書状の送付先に原告のディストリビュータやユーザが含まれているとしても,上記各書状は,被告の製品に関する一般的な販促文書にすぎないと解すべきである。 したがって,上記各書状の送付は,原告の「営業上の信用を害する」ものとはいえない。

⑵ 本件書状3,本件書状4及び本件メールについて

本件書状3,本件書状4及び本件メールは,いずれも原告ソフトウェアのユーザであるニフティに対するものである。また,上記書状等の記載内容は,前記第2の1(前提事実)⑺ウないしオのとおり,いずれも,ニフティシステムの使用が本件特許権1を侵害する行為であって同社とのライセンス契約の締結を求めるというものである上,本件書状3には,上記侵害の事実が存在する旨の公証人作成の事実実験公正証書(甲8)が,本件書状4には同旨の弁理士作成の鑑定意見書(甲9)が添付されている。そして,ニフティシステムの使用は原告ソフトウェアの使用を意味する(弁論の全趣旨)。

上記各書状及び本件メールの送付先及びその内容に照らせば,これらの書状等に原告に関する直接的な記載が見当たらないことを考慮しても,当該書状等について,一般的な被告の製品の販促文書であると解することはできず,原告ソフトウェアの使用が本件特許権1などの特許権を侵害する旨を原告ソフトウェアのユーザに指摘する文書であると解するのが相当である。 したがって,上記各書状及び本件メールは,原告の「営業上の信用を害するもの」に該当する。

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