ランフラットタイヤ事件

裁判所 知財高裁
判決日 2017年08月22日
事件名 ランフラットタイヤ事件
キーワード 明確性要件
着目点 「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」という文言は、規格においても特段の定義なく用いられているから、その意義を把握することができると判断された例
事件番号 平成29年(行ケ)10006号 平成29年(行ケ)10015号
判決のポイント

争 点

「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」との記載は、どのように変化をしていればほぼ直線状と判断すればよいか分からないか。

裁判所の判断(抜粋)

「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」との記載

ア ASTM規格(乙31)は,世界最大規模の標準化団体である米国試験材料協会が策定・発行する規格であるところ,ASTM規格においては,温度上昇に伴って変化する物性値のグラフから,ポリマーのガラス転移温度を算出するに当たり,ほぼ直線的に変化する部分を特段定義しないまま,同部分の外挿線を引いている。また,JIS規格(乙13)は,温度上昇に伴って変化する物性値のグラフから,プラスチックのガラス転移温度を算出するに当たり,「狭い温度領域では直線とみなせる場合もある」「ベースライン」を延長した直線を,外挿線としている。

そうすると,ポリマーやプラスチックのガラス転移温度の算出に当たり,温度上昇に伴って変化する物性値のグラフから,特定の温度範囲における傾きの変化の条件を規定せずに,ほぼ直線的な変化を示す部分を把握することは,技術常識であったというべきである。

そして,ポリマー,プラスチック及びゴムは,いずれも高分子に関連するものであるから,ゴム組成物の耐熱性に関する技術分野における当業者は,その主成分である高分子に関する上記技術常識を当然有している。

したがって,ゴム組成物の耐熱性に関する技術分野における当業者は,上記技術常識をもとに,昇温条件で測定したときの動的貯蔵弾性率の温度による変化を示す図において,特定の温度範囲における傾きの変化の条件が規定されていなくても,「ほぼ直線的な変化を示す部分」を把握した上で,同部分の外挿線を引くことができる。

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