不正競争行為差止等請求事件

裁判所 東京地裁
判決日 2017年06月28日
事件名 不正競争行為差止等請求事件
キーワード 不競法商品等表示性該当性
着目点 原告商品である不規則充填物について商品等表示性が認められ、被告の不正競争行為(2条1項1号)が認定された例
事件番号 平成27年(ワ)24688号
判決のポイント

争 点

原告商品における形態の商品等表示性

裁判所の判断(抜粋)

(1)原告商品の形態の「商品等表示」該当性について

 商品の形態は,商標等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないが,商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合がある。そして,このように商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有し,不競法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当するためには,①商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,②その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により(周知性),需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていることを要すると解するのが相当である。

 これを本件について検討するに,前記第2の2(2)及び上記第4の1(1)アないしオによれば,原告製品は,原告主張に係る原告製品の形態的特徴のうち,①中央リングと中央リングの周囲から外側に向かって放射状に延伸する多数の周辺リングからなり,これら周辺リングと中央リングとは略直交するように一体化されている形状について共通した特徴を有している点,・・・がそれぞれ認められ,当該形態は,上記(1)カの他の充填物とは明らかに異なる特徴を有していることからすれば,上記に掲げた点において,特別顕著性が認められる。

 さらに,上記(1)アないしオによれば,原告製品はいずれも,日本国内において,①販売開始当初の頃から,その形状を撮影した写真等と共に,全60国的に宣伝広告され,文献や業界誌にも多数掲載されていたことが認められ,②また,需要者である不規則充填物の購入者間において需要が高く,直接の販売あるいは代理店を通じて,相当多数が販売されてきたものと推認できる。したがって,周知性が認められる。

(2) 実用新案権による独占状態に由来する周知性か否かについて

 ・・・特許権や実用新案権等の知的財産権の存在により独占状態が生じ,これに伴って周知性ないし著名性が生じるのはある意味では当然のことであり,これに基づき生じた周知性だけを根拠に不競法の適用を認めることは,結局,知的財産権の存続期間経過後も,第三者によるその利用を妨げてしまうことに等しく,そのような事態が,価値ある情報の提供に対する対価として,その利用の一定期間の独占を認め,期間経過後は万人にその利用を認めることにより,産業の発達に寄与するという,特許法等の目的に反することは明らかである。もっとも,このように,周知性ないし著名性が知的財産権に基づく独占により生じた場合でも,知的財産権の存続期間が経過した後相当期間が経過して,第三者が同種競合製品をもって市場に参入する機会があったと評価し得る場合など,知的財産権を有していたことに基づく独占状態の影響が払拭された後で,なお原告製品の形状が出所を表示するものとして周知ないし著名であるとの事情が認められる場合であれ ば,何ら上記特許法等の目的に反することにはならないから,不競法2条1項1号の適用があるものと解するのが相当である

 前記第2の2(2)のとおり,原告商品のうちS-O型については昭和54年6月23日に実用新案権1の存続期間が満了した。そして,被告商品の販売を開始した平成24年12月までには,約30年と相当長期間が経過しているから,第三者が同種競合商品をもって市場に参入する機会は十分にあったと評価し得るものであり,実用新案権1を有していたことに基づく独占状態の影響が払拭されていたものというべきである。また,上記(1)アないしエによれば,実用新案権1の存続期間が満了した昭和54年6月23日以降も,原告は,S-O型について,広告・宣伝を継続し,文献や業界誌にも多数掲載されていた事実が認められること,上記(1)オによれば,上記昭和54年6月23日以降も,継続的・独占的に大量に製造・販売を続けていたといえることからすると,S-O型につき,昭和54年6月23日まで実用新案権1が存続していたとしても,その後,実用新案権1を有していたことに基づく独占状態の影響がなくなった後の原告の営業努力 によって,原告商品の形状が出所を表示するものとして周知ないし著名であるとの事情があるものと認められる。

*「不規則充填物」とは、化学工場等の充填塔と呼ばれる装置の内部に充填され塔内でのガス吸収操作などを行うための部材

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