入力支援コンピュータプログラム事件

裁判所 知財高裁
判決日 2017年11月28日
事件名 入力支援コンピュータプログラム事件
キーワード クレーム解釈
着目点 明細書の記載を参酌して、「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」とは、画面上におけるポインタの座標位置を移動させる操作であると解釈した例
事件番号 平成29年(ネ)10038号
判決のポイント

争点

「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」の充足性について

裁判所の判断

ウ 前記イを踏まえて,構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」を検討すると,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」とは,タッチパネルを含む入力手段から,画面上におけるポインタの座標位置を移動させる命令(電気信号)を処理手段が受信することである。そして,利用者がマウスにおける左ボタンや右ボタンを押す操作に対応する電気信号ではなく,マウスにおける左ボタンや右ボタンを押したままマウスを移動させる操作(ドラッグ操作)に対応する電気信号を,入力手段から処理手段が受信することを含むものである。また,本件発明1は,利用者が入力手段を使用してデータ入力を行う際に実行される入力支援コンピュータプログラムであり,利用者が間違ってマウスの右クリックを押してしまった場合等に利用者の意に反して画面上に操作コマンドのメニューが表示されてしまう等の従来技術の課題を踏まえて,システム利用者の入力を支援するため,利用者が必要になった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表示させる手段を提供することを目的とするものである。

そうすると,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」とは,タッチパネルを含む入力手段から,画面上におけるポインタの座標位置を,入力支援が必要なデータ入力に係る座標位置(例えば,ドラッグ操作を開始する座標位置)からこれとは異なる座標位置に移動させる操作に対応する電気信号を,処理手段が受信することを意味すると解するのが相当である。

そして,前記第2の1(3)イのとおり,本件ホームアプリにおいて,控訴人が「操作メニュー情報」に当たると主張する左右スクロールメニュー表示は,利用者がショートカットアイコンをロングタッチすることにより表示されるものであるが,ロングタッチは,ドラッグ操作などとは異なり,画面上におけるポインタの座標位置を移動させる操作ではないから,入力手段であるタッチパネルからロングタッチに対応する電気信号を処理手段が受信することは,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」とはいえない。

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