多接点端子を有する電気コネクタ事件

裁判所 知財高裁
判決日 2017年05月31日
事件名 多接点端子を有する電気コネクタ事件
キーワード 進歩性
着目点 引用発明の一部の構成を分離して適用することが否定された例
事件番号 平成28年(行ケ)10150号
判決のポイント

争点

刊行物1と刊行物2とを組み合わせると本件発明に想到するか。

裁判所の判断(抜粋)

そこで,刊行物1発明の側方突出部26に刊行物2記載のコネクタの弾性舌部に係る構成を適用することによりその下縁に「凹部」を形成する構成とするためには,刊行物1発明の側方突出部26の構成のうち,「下縁に凹部が形成され」た構成のみを残した上で,それ以外の構成を刊行物2記載のコネクタの弾性舌部に係る構成と置き換えることが必要となる(本件審決も,このような置換えを前提として,その容易性を認めたものと理解される。)。しかしながら,刊行物1発明の側方突出部26に刊行物2記載のコネクタの弾性舌部に係る構成を適用するに際し,上記側方突出部26が備える一体的構成の一部である下縁の「凹部」の構成のみを分離し,これを残すこととすべき合理的な理由は認められない。そもそも,刊行物1発明の側方突出部26の下縁に凹部が形成されている理由については,刊行物1に何ら記載されておらず,技術常識等に照らして明らかなことともいえないから,当該構成の技術的意義との関係でこれを残すべき理由があると認められるものではない。したがって,当業者が,刊行物1発明の側方突出部26に刊行物2記載のコネクタの弾性舌部に係る構成を適用するに当たり,刊行物1発明の側方突出部26における下縁の「凹部」の構成のみをあえて残そうとすることは,考え難いことというほかない。

してみると,刊行物1発明に刊行物2記載のコネクタの弾性舌部に係る構成を適用したとしても,相違点1に係る本件訂正発明の構成のうち,上位の弾性腕の斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁に凹部が形成される構成とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえないから,相違点1に係る本件審決の上記判断は誤りである。

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