鋼管ポール事件

裁判所 知財高裁
判決日 2017年09月19日
事件名 鋼管ポール事件
キーワード 進歩性要旨認定
着目点 特許請求の範囲にある文言が明確ではないとして明細書を参酌して発明の要旨を認定し、引用発明と相違点を看過したと判断した例
事件番号 平成29年(行ケ)10001号
判決のポイント

争点

本件発明と引用発明の相違点の認定の看過

裁判所の判断(抜粋)

被告は,本件補正発明では「筒状の基礎体」について,「支柱の下端部を固定する鋼製基礎」を構成するものであること,「支柱」と「締付部材により締め付け固定され」ること,「地中に埋設されること」及び「支柱」が「貫通して先端部分が地中に突出している」こと,並びに「上下に貫通した筒状」のものであることが特定されているのみであると主張する。

しかし,本件補正発明の特許請求の範囲には,「前記基礎体と前記支柱とは締付部材により締め付け固定され」と記載され,「基礎体」と「締付部材」とが区別されているから,「支柱」を固定する部材である「基礎体」の技術的意義を一義的に明確に理解することができず,その要旨の認定に当たっては,発明の詳細な説明の記載を参酌することが許される特段の事情があるというべきである。そして,前記⑴のとおり,特許請求の範囲の記載に加え,本願明細書の記載及び用語の一般的意義を併せて考慮すれば,「筒状の基礎体」とは,被告の上記主張のほか,支柱の荷重を地盤に伝え,地盤から抵抗を受ける部材という意義をも有するものと解される。

被告は,引用発明の「パイプ」は「支持基礎」の構成要素の一つであって,「土中での支圧部」の機能を果たしていなくても,本件補正発明の「筒状の基礎体」に相当すると主張する。

しかし,前記(1)のとおり,「基礎体」とは,少なくとも,支柱の荷重を地盤に伝え,地盤から抵抗を受ける部材であって,かかる「土中での支圧部」という機能を捨象することはできないから,被告の主張は採用することはできない。

TOP