豊岡柳事件

裁判所 知財高裁
判決日 2017年10月24日
事件名 豊岡柳事件
キーワード 商標混同のおそれ
着目点 原告業務の周知性や商標の使用態様等を考慮して、商標の出所の誤認・混同を生じさせるおそれがあると判断した例
事件番号 平成29年(行ケ)10094号
判決のポイント

争点

豊岡柳と豊岡杞柳細工は、商標の出所の誤認・混同を生じさせるか。

 

裁判所の判断

⑸ 小括

以上のとおり,①本件商標は,外観や称呼において引用商標と相違するものの,本件商標からは,豊岡市で生産された柳細工を施した製品という観念も生じ得るものであり,かかる観念は,引用商標の観念と類似すること,②引用商標の表示は,独創性が高いとはいえないものの,引用商標を付した原告商品は,原告の業務を示すものとして周知性を有しており,伝統的工芸品の指定を受け,引用商標が地域団体商標として登録されていること,③本件商標の指定商品は,原告商品と同一又は密接な関連性を有するもので,原告商品と取引者及び需要者が共通することその他被告の本件商標の使用態様及び需要者の注意力等を総合的に考慮すれば,本件商標を指定商品に使用した場合は,これに接した取引者及び需要者に対し,原告の業務に係る「豊岡杞柳細工」の表示を連想させて,当該商品が原告の構成員又は原告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され,商品の出所につき誤認を生じさせるとともに,地域団体商標を取得し通商産業大臣から伝統的工芸品に指定された原告の表示の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を生じかねない。

そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に当たると解するのが相当である。

⑹ 被告の主張について

ア 被告は,被告は出所を混同されることのないように引用商標とは全く類似しない本件商標を付して商品を販売しており,取扱商品ジャンルや原材料が同じであっても需要者は十分に識別している旨主張する。

・・・

以上のとおり,被告は,被告商品を販売するに当たり,被告商品のパンフレットや被告商品を紹介するウェブサイトに,豊岡における杞柳細工の歴史,豊岡杞柳細工が伝統的工芸品に指定されていること,杞柳細工の製法,特徴等を紹介する文章を掲載するなど,引用商標又は原告商品と誤認を生じさせるような態様で使用している。そして,本件商標と引用商標とは観念において類似する点があること,引用商標の周知著名性の程度や商品の関連性,その他取引の実情等を踏まえると,本件商標をその指定商品に使用した場合に,原告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあることについては,前記⑸のとおりである。

したがって,被告の上記主張は採用できない。

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