対戦ゲーム制御プログラム事件
裁判所 | 知財高裁 |
---|---|
判決日 | 2020年06月04日 |
事件名 | 対戦ゲーム制御プログラム事件 |
キーワード | |
着目点 | ゲームのルールの相違に基づき、進歩性を認定した事例 |
事件番号 | 令和元年(行ケ)10085号 |
判決のポイント
争 点
進歩性の判断
裁判所の判断
(2) しかしながら,審決の上記論理構成は,次のとおり不相当である。
ア 審決は,引用発明の認定に当たって「カード」の種類に言及していないが,CARTEによれば,第10領域から第11領域へのカードの補充の契機となるのは,「シャードカード」(深緑の地色に白抜きで円形と三日月形が表示されているカード)の第11領域から第7領域への移動及び第7領域から第6領域への移動である(00分39秒~40秒,00分49秒~50秒等)。
そして,「シャードカード」は,専ら「マナ」(カードのセッティングやスキルの発動に必要不可欠なエネルギー)を増やすために用いられるカードであり,その移動先はシャードゾーン(第7領域)又はマナゾーン(第6領域)に限られ,敵との直接の攻防のためにアタック ゾーン(第3領域)又はディフェンスゾーン(第4領域)に移動させられることはない。これに対し,「クリーチャーカード」は,敵のクリーチャーやヒーローとの攻防に直接用いられるものであって,第11領域から適宜アタックゾーン(第3領域)又はディフェンスゾーン(第4領域)に移動させられ,攻防の能力を表す「APの値」及び「HPの値」を有している。
イ このように,引用発明におけるカードの補充は,本願発明におけるそれとの対比において,補充の契機となるカードの移動先の点において異なるほか,移動されるカードの種類や機能においても異なっており,相違点6は小さな相違ではない。そして,かかる相違点6の存在によって,引用発明と本願発明とではゲームの性格が相当程度に異なってくるといえる。したがって,相違点6に係る構成が「ゲーム上の取決めにすぎない」として,他の公知技術等を用いた論理付けを示さないまま容易想到と判断することは,相当でない。
(3) 被告の主張について
被告は,手持ちのカードの数が減じたときにこれを補充する構成(乙7,乙8)とするかこれを補充しない構成(乙9,乙10)とするかは,ゲーム制作者がゲームのルールを決める際に適宜決めるべき設計的な事項にすぎないから,引用発明において,第3領域(アタックゾーン)にカードを配置した場合でも第11領域の手持ちカードが補充されるようにすることは,何ら技術的な困難性があることではなく,まさに,提供しようとするゲーム性に応じたゲーム上の取決めにすぎない旨主張する。
しかしながら,相違点6は,ゲームの性格に関わる重要な相違点であって,単にルール上の取決めにすぎないとの理由で容易想到性を肯定することはできないことは,(2)において説示したとおりである。