ふふふ事件
裁判所 | 東京地裁 |
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判決日 | 2024年12月05日 |
事件名 | ふふふ事件 |
キーワード | |
着目点 | 本件商標と被告標章とは、称呼は一致するものの、外観、観念が一致せず、類似しないと判断された例 |
事件番号 | 平成31年(ワ)11130号 |
判決のポイント
対象商標
被告標章2
被告標章5
争 点
本件商標と被告標章は類似するか。
裁判所の判断
(被告標章2について)
ア 被告標章2は,「富富富」の漢字によって成り,「フフフ」,「トミトミトミ」の称呼を生じる。そして,「富」の漢字に,「とむ。物がゆたかにある。とみ。財産。」という意味があること(弁論の全趣旨)から,被告標章2は,これらの意味や「3つの富」という漠然とした意味合いを想起させることがあるとしても,何らかの具体的な観念を生じるとまではいえない。
イ 被告標章2と本件商標を比較すると,これらは外観において明らかに異なる。他方,被告標章2と本件商標は,「フフフ」の称呼を共通にする場合がある。もっとも,被告標章2は特定の観念を生じないのに対し,本件商標は軽く笑う声等の観念を生じ,これらは観念において異なる。
そうすると,被告標章2と本件商標は,称呼において類似する場合があるとしても,外観,観念において相違しており,その出所について誤認混同を生じさせるような取引の実情があるとは認められず,同一又は類似の商品等に使用された場合に,商品等の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認められない。
したがって,被告標章2は本件商標と同一又は類似のものではない。
(被告標章5について)
被告富山県は,富山県内で開催された本件イベント2に関し,被告標章5の文字列を含む「「♯fufufu!」と食べたい とやま極上の味」との文言を使用した(前記1⑸)。
本件イベント2は,被告富山県が,富山県の食の魅力を県内外に発信するために不定期に実施している企画の一環として開催されたものである。本件イベント2は,特に本件米の新発売等を踏まえた特色があることが明らかにされ,会場において,本件米の広告,宣伝がされ,本件米を紹介する企画等が催されていた(前記1⑸)。これらから,上記文言も,本件米についてインスタグラムに投稿してもらい,本件米を一層広く発信することにつなげることへの期待も含めて,本件米の名称である「富富富」を欧文字で表示したものとハッシュ記号を組み合わせたという観点も込めて定められたものといえ,上記語句を見た需要者は,その「♯fufufu!」の部分は,「富富富」という名称の本件米の名称である「富富富」を欧文字で表示したという意味を有すると理解すると認められる。
本件においては,被告富山県による被告標章5の使用は,本件イベント2における使用が問題となるところ(他に,被告富山県が被告標章5を使用したことを認めるに足りる証拠はない。),そこにおける被告標章5の使用の態様に鑑みれば,その被告標章5は,本件米の名称である「富富富」の欧文字による表記にハッシュタグ等を組み合わせたものといえることが明らかであって,そこからは本件米の名称であるとの観念が生じるのであり,これは,本件商標の観念と類似しない。そうすると本件商標と被告標章5の称呼は一致するといえるが,その外観が異なるほか,その観念は一致せず,被告標章5の使用の態様に鑑みると,本件商標と上記の使用による被告標章5は類似しない。