SANKO事件
裁判所 | 知財高裁 |
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判決日 | 2021年07月29日 |
事件名 | SANKO事件 |
キーワード | |
着目点 | やや図案化された「SANKO」の欧文字とその左側の図形を分離して観察できるとした例 |
事件番号 | 令和3年(行ケ)10026号 |
判決のポイント
対象商標
引用商標
争 点
本願商標と引用商標の類否
裁判所の判断
2 本願商標について
(1) 本願商標は、朱色の半楕円と同色縞模様の半楕円を斜めに接するように組み合わせてなる図形を配した本願図形部分と、その右にやや図案化された「SANKO」の欧文字を本願図形部分と同様の朱色で横書きした本願文字部分からなるところ、図形と文字という構成要素の性質の違いや、本願図形部分の上部が本願文字部分の上部よりも少なからず上にはみ出す形となっていることのほか、本願文字部分については容易に「サンコ」又は「サンコー」という称呼を有する部分として理解されることからすると、本願図形部分と本願文字部分とは、外観上、明確に分離して看取されるものであるといえる。そうすると、本願図形部分及び本願文字部分について、それらの部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものとはいえない。
(2) 上記のとおり容易に特定の称呼を有する部分として理解される本願文字部分は、本願商標の構成の大きな部分(7割以上)を占めている。そして、「SANKO」の文字は、辞書等に載録のない語であるから、特定の観念を生じないものである。そうすると、本願文字部分は、需要者の印象に残りやすく、強い印象を与えるということができる。
(3) これに対し、本願図形部分については、その形状に照らし、称呼を有しない図形であるのか、一定の文字を図案化したものであるのか、一見して直ちに明確なものであるとはいい難いが、商標において、企業等の名称の文字の一部が図案化される例は少なからずあると解されることや、本願文字部分の冒頭の文字が「S」であることからすると、本願図形部分は、「S」を図案化したものであると理解することも可能であるといえ、その場合には本願図形部分から「エス」の称呼が生じ得る。
もっとも、本願文字部分の冒頭の文字が「S」であることからすると、本願図形部分が「S」を図案化したものと理解される場合においては、本願文字部分の冒頭の「S」を取り出して特に図案化して配置したものにすぎず、本願文字部分と独立した意味を有するものではないとの理解がされることも多いものとみることができる。
(4) 上記(1)~(3)からすると、本願商標については、本願文字部分のみによって商標の類否を判断することも許されるということができる。
したがって、本願商標は、その構成文字に相応して、「サンコー」又は「サンコ」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。