重合性化合物含有液晶組成物及びそれを使用した液晶表示素子事件
裁判所 | 知財高裁 |
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判決日 | 2017年06月14日 |
事件名 | 重合性化合物含有液晶組成物及びそれを使用した液晶表示素子事件 |
キーワード | |
着目点 | 複数の成分に関して、引用発明にある上位概念から選択した発明について、各成分を別個に検討した審決には誤りがあると判断した例 |
事件番号 | 平成28年(行ケ)10037号 |
判決のポイント
争点
複数の構成要件のそれぞれが、引用発明の下位概念である発明は、引用発明の選択発明か。
裁判所の判断(抜粋)
要するに,本件審決は,引用発明である甲1発明と本件発明との間に包含関係(甲1発明を本件発明の上位概念として位置付けるもの)を認めた上,甲1発明において相違点に係る構成を選択したことに格別の技術的意義が存するかどうかを問題にしており,その結果,本件発明が甲1発明と実質的に同一であるとして新規性を認めなかったのであるから,本件審決がいわゆる選択発明の判断枠組みに従って本件発明の特許性(新規性)の判断を行っていることは明らかである。
・・・
(3) 本件審決の判断の妥当性
本件発明1は,・・・前記①ないし④の選択についても,選択された化合物を混合することが予定されている以上,本件発明の目的との関係において,相互に関連するものと認めるのが相当である。
そして,本件発明1は,これらの選択を併せて行うこと,すなわち,これらの選択を組み合わせることによって,広い温度範囲において析出することなく,高速応答に対応した低い粘度であり,焼き付き等の表示不良を生じない重合性化合物含有液晶組成物を提供するという本件発明の課題を解決するものであり,正にこの点において技術的意義があるとするものであるから,本件発明1の特許性を判断するに当たっても,本件発明1の技術的意義,すなわち,甲1発明Aにおいて,前記①ないし④の選択を併せて行った際に奏される効果等から認定される技術的意義を具体的に検討する必要があるというべきである。
ところが,本件審決は,前記のとおり,前記①の選択と,同②及び③の選択と,同④の選択とをそれぞれ別個に検討しているのみであり,これらの選択を併せて行った際に奏される効果等について何ら検討していない。このような個別的な検討を行うのみでは,本件発明1の技術的意義を正しく検討したとはいえず,かかる検討結果に基づいて本件発明1の特許性を判断することはできないというべきである。