建物扉用把手事件

裁判所 知財高裁
判決日 2017年09月27日
事件名 建物扉用把手事件
キーワード

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着目点 要部の美観に大きな差異があること等を理由として、基本的構成態様が類似していることを考慮しても非類似であると判断した例
事件番号 平成29年(行ケ)10048号

判決のポイント

争点

本件意匠と甲1意匠は類似するか。

 

裁判所の判断(抜粋)

イ 本件意匠の要部

(ウ)上記認定事実によれば,取引時に用いられる建物用扉の把手に係る意匠については,取引の実情を踏まえると,建物の扉に取り付けられた底面部を除き,把手全体の外観が最も重視されるものといえる。また,把手を利用する者は,扉を開ける際に側面中間部の凹みを掴むことになるから,側面中間部の凹み周辺の形態も取引者,需要者の注意を惹く部分であるといえる。そして,本件意匠のうち,横長棒状で底面が平坦面状であって側面中間部が凹んでいるという基本的構成態様は,取引者,需要者にとって周知であったことが認められる。

これらの事情の下においては,取引者,需要者の最も注意を惹きやすい部分は,横長棒状の全体形状及び側面中間部の凹み周辺の形態であるというべきである。

したがって,本件意匠の要部は,正面の外形状が左右対称の略扁平台形状であることに加えて,側面中央部の凹みの左右縁が略凹弧状に表されている形態であると認めるのが相当である。

 

ウ 本件意匠と甲1意匠の類否

横長棒状の全体形状については,正面から見て,本件意匠が左右対称の略扁平台形状であるのに対し,甲1意匠は左右非対称の略扁平行四辺形状であり,とりわけ,その左端部上部が略逆コ字状に突出している。そのため,取引者,需要者にとって,本件意匠及び甲1意匠は,全体として美感に大きな差異があることが認められる。

また,側面中間部の凹み周辺の形態については,本件意匠では,凹みの左右縁は略凹弧状に表されているのに対し,甲1意匠では,凹みの上部が鋭く屈曲して,下部が緩やかな略S字状に表されており,甲1意匠の凹み周辺の厚みが本件意匠に比べて薄くなっている。そのため,把手の使用感を大きく左右する部分についても,美感に一定の差異があることが認められる。

上記認定事実によれば,本件意匠と甲1意匠とは,要部である正面の外形上の全体形状の美感に大きな差異があるとともに,使用感を左右する凹み周辺の形態の美感にまで一定の差異があることからすると,基本的構成態様が類似していることを考慮しても,両意匠を全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。

したがって,両意匠が類似するものと認めることはできない。