フラーレン誘導体事件
裁判所 | 知財高裁 |
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判決日 | 2017年11月14日 |
事件名 | フラーレン誘導体事件 |
キーワード | |
着目点 | 引用発明には含まれていないフラーレン変性物の酸化物の数値範囲を特定することは容易想到ではないと判断した例 |
事件番号 | 平成28年(行ケ)10219号 |
判決のポイント
争点
引用発明のフラーレン変性物には酸化物が含有され、その酸化物の累計範囲を「0.001%から5%」と設定する構成を採用することは容易か。
裁判所の判断
イ 引用例における酸化物に関する記載
引用例には,フラーレン誘導体の酸化物について,一切記載はない。
したがって,引用発明のフラーレン変性物に,C60のフラーレン誘導体の酸化物及びC70のフラーレン誘導体の酸化物が含まれるということはできない。
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(1) 相違点2の容易想到性について
本件審決は,引用発明において,フラーレン誘導体の酸化物を含めた複数の酸化物が特定の範囲に含まれているとはいえないことなどから,相違点2は容易に想到することはできないと判断した。
これに対し,原告は,原告主張の前記技術常識から,引用発明のフラーレン変性物には酸化物が含有され,その酸化物の累計範囲を「0.001%から5%」と設定して,相違点2に係る本件発明の構成を採用することは,容易に想到することができる旨主張する。
しかし,前記3⑶のとおり,引用発明は,C60のフラーレン誘導体の酸化物やC70のフラーレン誘導体の酸化物を含むものとはいえないところ,引用例には,フラーレン誘導体の酸化物に関する記載が一切なく,フラーレン誘導体の製造方法に関する記載もない。また,本件証拠上,「製造後のフラーレン誘導体」にフラーレン誘導体の酸化物が存することが技術常識であったことを認めるに足りる証拠はない。
そうすると,相違点2に係る本件発明の構成のうち,C60の酸化物,C70の酸化物に加え,C60のフラーレン誘導体の酸化物及びC70のフラーレン誘導体の酸化物も含む構成を備えるようにすることを,引用発明から容易に想到することができたということはできない。
したがって,これら酸化物を「0.001%から5%の累計範囲」で含むという相違点2に係る本件発明の構成を容易に想到できたものということはできない。