ウォーターサーバ用ボトル事件

裁判所 大阪地裁
判決日 2017年11月21日
事件名 ウォーターサーバ用ボトル事件
キーワード

着目点 特許請求の範囲には明示されていない「接続部」の要件を導いた上で、同要件を満たさないと判断した例
事件番号 平成28年(ワ)7649号

判決のポイント

争点
被告の容器は、「前記胴部には,上下方向に伸縮自在な蛇腹部を有し,且つ該蛇腹部と前記底部との間には,底部に近づくに連れて先細りとなる裾絞り部を備え,」の構成にいう「裾絞り部」を備えているか。

裁判所の判断
(3) 構成要件Gの「裾絞り部」の意義
ア 構成要件Gは,「胴部には,上下方向に伸縮自在な蛇腹部を有し,」とある構成要件Fに続き,「且つ該蛇腹部と前記底部との間には,底部に近づくに連れて先細りとなる裾絞り部を備え,」とあるから,これらによれば,「裾絞り部」の位置は,胴部において蛇腹部と底部との間にあり,またその形状は底部に近づくに連れて先細りとなるものと定義される。
イ 蛇腹部に続く「裾絞り部」がいかなる態様で接続しているか検討するに,本件明細書をみると,裾絞り部と「蛇腹部との接続部などは,局地的に垂直に延在していても構わない。」(【0015】)との記載,「底部との接続部には曲面を介在させてもよい。」(【0010】)との記載があるから,蛇腹部から裾絞り部を経て底部に至る胴部は,それぞれの間の接続部が一定の幅をもって存在することが許容されていると解される。
しかし,本件明細書において,蛇腹部と裾絞り部の接続部が「垂直に延在して」よいとしても,その接続部は「局地的」,すなわち「ある区域に限られているさま。」(広辞苑第6版)という,場所的限定を意味する言葉が用いられていることからすると,同所で「垂直に延在」することが許される接続部は,蛇腹部及び裾絞り部に対して,より狭い限られた範囲であると解されるべきことになる。
そして,このように,胴部を「蛇腹部」と「裾絞り部」で構成し,その接続部を狭い限られた範囲にすべきことは,胴部に「蛇腹部」と「裾絞り部」を設ける技術的意義に関係するものである。
・・・
(6) 以上の「裾絞り部」の解釈を踏まえ,被告容器が裾絞り部を備え,構成要件Gを充足しているかを検討する。
ア 原告は,別紙「被告容器の構成(原告の主張)」記載の図面で「湾曲部」と指示した部分が「裾絞り部」に相当し,同部分の存在により構成要件Gを充足すると主張し,併せて,その上部にある垂直部分は,本件明細書の【0015】にいう「接続部」にすぎないとしている。
しかしながら,上記検討したとおり,「裾絞り部」は,「蛇腹部」から接続部で連続しているものであるが,この接続部は,極く限られた幅の範囲であるべきであって,上記図面に明らかなように,被告容器における原告主張に係る「裾絞り部」に相当する湾曲部と蛇腹部の間に存する,湾曲部と高さ方向の幅がほぼ一緒である垂直に延在する部分をもって「接続部」にすぎないということはできない。