ジョイファーム事件

裁判所 東京地裁
判決日 2018年02月14日
事件名 ジョイファーム事件
キーワード

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着目点 商品の製造・販売者と役務の提供者の出所が誤認混同されるおそれがあるかを実際の取引態様を踏まえて具体的に検討した事例
事件番号 平成29年(ワ)123号

判決のポイント

争 点 

被告各商品は本件指定役務に類似するか

裁判所の判断(抜粋)

2 争点1(被告各商品は本件指定役務に類似するか)について

⑴ 役務と商品とが類似のものであるかどうかは,取引の実情として,商品の製造・販売と役務の提供とが,通常,同一事業者によって行われている等の事情により,商品又は役務に同一又は類似の商標を使用する場合には,需要者において,当該商品が当該役務を提供する事業者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係があるか否かによって判断するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁,最高裁昭和36年(オ)第1388号同38年10月4日第二小法廷判決・民集17巻9号1155頁,最高裁昭和37年(オ)第955号同39年6月16日第三小法廷判決・民集18巻5号774頁参照)。・・・

⑶ア ・・・前記前提事実⑶,⑷のとおり,被告商品2(梅ジャム)及び3(ブルーベリージャム)については,いずれも「ジャム」であって,第29類の「加工野菜及び加工果実」に属する商品であり,本件指定役務において小売等役務の対象とされている「加工食料品」と関連する商品であると認められる。

イ しかしながら,一般に,ジャム等の加工食料品の取引において,製造者は小売業者又は卸売業者に商品を販売し,小売業者等によって一般消費者に商品が販売される業態は見られるところであり,本件の証拠上も,被告は,その製造に係る梅ジャム等の商品をパルシステム,生協,ケンコーコム等に販売し,これらの事業者によって一般消費者に商品が販売されていると認められるほか(上記1⑵),原告も,商品を自ら一般消費者に販売する以外に,らでぃっしゅぼーや,生協,デパートに販売し,これらの事業者によって一般消費者に商品が販売されていたと認められる(上記1⑴)。

 そうすると,他方で,ジャム等を製造して直接一般消費者に販売する事業者が存在するとして原告が提出する証拠(甲40の1・2)の内容を踏まえたとしても,ジャム等の加工食料品の取引の実情として,製造・販売と小売等役務の提供が同一事業者によって行われているのが通常であるとまでは認めることができないというべきである。

ウ また,商品又は役務の類否を検討するに当たっては,実際の取引態様を前提にすべきところ,被告標章2を包装に付した被告商品2及び3の取引態様は,上記1⑵イで認定したとおり,被告と継続的な取引関係があるケンコーコムにおいて,被告から商品を購入して自社が運営する通販サイトを通じて一般消費者に販売するというものであり,その通販サイトには,ケンコーコムの名称及びロゴが表示されていると共に,商品ごとに製造・販売者が表示されている。

 そうすると,ケンコーコムにおいて,被告商品2及び3が小売等役務を提供する事業者の製造又は販売に係る商品であると誤認するおそれがあるとは認め難く,また,通販サイトで被告商品2及び3を購入する一般消費者においても,製造・販売者とインターネット販売業者を区別して認識すると考えられるから,小売等役務を提供するインターネット販売業者の製造又は販売に係る商品であると誤認するおそれがあるとは認め難い。・・・

エ 以上のとおり,本件の証拠上,ジャム等の加工食料品の取引の実情として,製造・販売と小売等役務の提供が同一事業者によって行われているのが通常であるとまでは認めることができないというべきであり,被告商品2及び3の実際の取引態様を踏まえて検討しても,被告商品2及び3に本件商標と同一又は類似の商標を使用する場合に,需要者において,被告商品2及び3が本件小売等役務を提供する事業者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にはないというべきである。

 したがって,被告商品2及び3が本件指定役務に類似するとはいえないというべきである。