ゲンコツコロッケ事件

裁判所 知財高裁
判決日 2018年03月07日
事件名 ゲンコツコロッケ事件
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着目点 本件商標の要部は「ゲンコツ」と解すべきであり、当該要部が引用商標との類否判断の対象となると判断し、これに対応する特許庁の審決の部分を取消した事例
事件番号 平成29年(行ケ)10169号

判決のポイント

争 点 「ゲンコツコロッケ」が不可分一体と認識されるか

裁判所の判断(抜粋)

1 本件商標と引用商標との類否について

(1)ア 本件商標は,前記第2,1のとおり,「ゲンコツコロッケ」の片仮名を,毛筆で書したかのような字体で,「ゲ」「コ」「ケ」をやや大きく,その余の文字をやや小さく一連に書してなり,「ゲンコツコロッケ」の称呼を生じるものである。そして,本件商標のうち「ゲンコツ」は,「にぎりこぶし。げんこ。」を意味する(甲6)。

 証拠(甲54~58,60,61,63,乙3)及び弁論の全趣旨によると,本件登録審決日当時,「ゲンコツ」は,食品分野において,ゴツゴツした形状や大きさがにぎりこぶし程度であることを意味する語として用いられることがあったものと認められる。「コロッケ」は,「揚げ物料理の一つ。あらかじめ調理した挽肉・魚介・野菜などを,ゆでてつぶしたジャガイモやベシャメル・ソースと混ぜ合わせて小判形などにまとめ,パン粉の衣をつけて油で揚げたもの。」を意味する(甲5)。

 本件商標は,「ゲンコツ」と「コロッケ」の結合商標と認められるところ,その全体は8字8音とやや冗長であること,上記のとおり「コ」の字がやや大きいこと,「ゲンコツ」も「コロッケ」も上記の意味において一般に広く知られていることからすると,本件商標は,「ゲンコツ」と「コロッケ」を分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものである。

 また,本件商標の指定商品のうち本件訴訟において争われている指定商品は,いずれも,「コロッケ入り」の食品であるから,本件商標の構成のうち「コロッケ」の部分は,指定商品の原材料を意味するものと捉えられ,識別力がかなり低いものである。これに対し,上記のとおり,「ゲンコツ」は,食品分野において,ゴツゴツした形状や大きさがにぎりこぶし程度であることを意味する語として用いられることがあることから,「ゲンコツコロッケ」は,「ゴツゴツした,にぎりこぶし大のコロッケ」との観念も生じ得るが,常にそのような観念が生ずるとまではいえず,また,本件商標の指定商品の原材料である「コロッケ」は,ゴツゴツしたものやにぎりこぶし大のものに限定されていないのであるから,「ゲンコツ」は,「コロッケ」よりも識別力が高く,需要者に対して強く支配的な印象を与えるというべきである

 さらに,証拠(甲51,66~72)及び弁論の全趣旨によると,被告が,本件商標を使用して,「ゲンコツコロッケ」の販売を開始したのは,平成26年6月3日であり,販売開始は新聞の電子版で報道され,「ゲンコツコロッケ」は,人気商品となって,販売開始から短期間で多数個が販売されたことが認められる。しかし,本件登録審決日は上記の販売開始から約3か月間経過後であること,コロッケのような食品の需要者はきわめて多数にのぼると考えられることからすると,上記のような被告による販売の事実があるとしても,「ゲンコツコロッケ」が不可分一体と認識されると認めることはできない。