ユニットシェルフ事件
裁判所 | 知財高裁 |
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判決日 | 2018年03月29日 |
事件名 | ユニットシェルフ事件 |
キーワード | |
着目点 | 被控訴人商品形態のうち特徴的部分が競争上似ざるを得ない形態であり商品の出所を識別する商品等表示には該当しないと解するべきか、について判断した事例 |
事件番号 | 平成29年(ネ)10083号 |
判決のポイント
争 点
被控訴人商品形態が周知の商品等表示に該当するか
裁判所の判断(抜粋)
2 特別顕著性・周知性について
控訴人は,識別力調査の結果(乙29及び乙30)によれば,約98%もの一般消費者が被控訴人商品形態を見ても被控訴人商品であると識別できず,また,控訴人と取引関係にある家具等の生活用品取扱業者5社の担当者10名に対して実施した識別力調査の結果(乙31)によれば,10名中9名もの担当者が被控訴人商品形態を見ても被控訴人商品であると識別できなかったとして,被控訴人商品形態は,一般消費者の間でも,事業者の間でも,出所識別力を有していないなどと主張する。
そこで検討するに,不正競争防止法2条1項1号は,周知性の要件につき,「需要者の間に広く認識されているもの」と規定するところ,上記にいう「需要者」とは,当該商品等の取引の相手方をいうものと解するのが相当である。
これを前者の識別力調査(乙29及び乙30)についてみると,当該調査の対象者は,控訴人の主張によっても単に二十代から四十代の一般消費者であるというにとどまるところ,控訴人商品及び被控訴人商品が金属製のユニットシェルフの家具であって,一般消費者が卒然と購入に至るような性質の商品でないことを考慮すると,少なくともこれらの商品を含む家具一般について何らかの関心を有する者を,上記にいう需要者と解すべきものである。また,調査における質問内容についても,控訴人商品又は被控訴人商品に関してどの販売店の商品か分かるかを尋ねるなど,具体的な出所の認識を直接の問題とする点で,必ずしも適切なものとはいえない。そうすると,上記識別力調査は,周知性を否定する証拠として適格ではない。
また,後者の識別力調査(乙31)についてみても,当該調査の対象者は,控訴人自身の取引の相手方の従業員である上,その規模も5社10名にとどまるものであるから,周知性の有無を裏付ける証拠としては,信用性を欠くといわざるを得ない。
したがって,上記識別力調査は,前記引用に係る原判決の結論を左右するものとはいえず,控訴人の主張は,採用することができない。
3 商品等表示該当性(競争上似ざるを得ない形態)について
控訴人は,被控訴人商品形態のうち,原判決が特徴的部分であると認定した2本ポール構造,横桟及びクロスバーは,いずれも競争上似ざるを得ない形態であり,商品等表示には該当しないと主張する。
そこで検討するに,控訴人は,2本ポール構造及び横桟が,隣接する棚板をそれぞれ1本の支柱に接合することによって,隣接する棚板同士が干渉しない機能にするために,通常選択される構造であると主張するものの,証拠(甲229ないし甲231)及び弁論の全趣旨によれば,棚板の左辺と右辺の金具の位置をずらして横桟の上面の溝にはめ込む構造や,棚板に埋め込まれたパイプの突出部を棚の両側面に位置する板の穴状の溝部分に差し込む構造等によっても,当該機能を果たすことができるものと認められる。そうすると,2本ポール構造が必ずしも上記機能を果たすために通常選択される構造であると認めることはできない。
また,控訴人は,クロスバー(形態的特徴④)が,棚板の揺れ等を押さえる機能にするために,通常選択される構造であると主張するものの,証拠(甲231)及び弁論の全趣旨によれば,2本の支柱の間に新たな棒材を水平又は斜めに追加する構造等によっても,当該機能を果たすことができるものと認められる。そうすると,クロスバーが必ずしも上記機能を果たすために通常選択される構造であると認めることはできない。
のみならず,前記引用に係る原判決が説示するとおり,被控訴人商品形態は,被控訴人商品形態①ないし⑥を全て組み合わせた点において独自の特徴が認められるのであって,この点において特別顕著性を獲得したものである。そうすると,各個別の形態が競争上似ざるを得ないものであるという主張は,上記組合せの独自性において特別顕著性を認めた前記引用に係る原判決を正解するものとはいえず,特別顕著性に係る当審の判断を左右するものとはならない。
したがって,控訴人の主張は,特別顕著性に係る原審の判断を正解しないもの,又はその前提を欠くものであって,採用することができない。