ピリミジン誘導体事件
裁判所 | 知財高裁 |
---|---|
判決日 | 2018年04月13日 |
事件名 | ピリミジン誘導体事件 |
キーワード | |
着目点 | 無効審判請求の訴えの利益について判断した例 |
事件番号 | 平成28年(行ケ)10182号 |
判決のポイント
争点
特許権の存続期間満了後に行われた無効審判請求は、訴えの利益がないか。
裁判所の判断
・・・そして,特許無効審判請求は,当該特許権の存続期間満了後も行うことができるのであるから(特許法123条3項),特許権の存続期間が満了したからといって,特許無効審判請求を行う利益,したがって,特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益が消滅するものではないことも明らかである。
イ 被告は,特許無効審判請求を不成立とした審決に対する特許権の存続期間満了後の取消しの訴えについて,東京高裁平成2年12月26日判決を引用して,訴えの利益が認められるのは当該特許権の存在による審判請求人の法的不利益が具体的なものとして存在すると評価できる場合のみに限られる旨主張する。
しかし,特許権消滅後に特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益が認められる場合が,特許権の存続期間が経過したとしても,特許権者と審判請求人との間に,当該特許の有効か無効かが前提問題となる損害賠償請求等の紛争が生じていたり,今後そのような紛争に発展する原因となる可能性がある事実関係があることが認められ,当該特許権の存在による審判請求人の法的不利益が具体的なものとして存在すると評価できる場合のみに限られるとすると,訴えの利益は,職権調査事項であることから,裁判所は,特許権消滅後,当該特許の有効・無効が前提問題となる紛争やそのような紛争に発展する可能性の事実関係の有無を調査・判断しなければならない。そして,そのためには,裁判所は,当事者に対して,例えば,自己の製造した製品が特定の特許の侵害品であるか否かにつき,現に紛争が生じていることや,今後そのような紛争に発展する原因となる可能性がある事実関係が存在すること等を主張することを求めることとなるが,このような主張には,自己の製造した製品が当該特許発明の実施品であると評価され得る可能性がある構成を有していること等,自己に不利益になる可能性がある事実の主張が含まれ得る。
このような事実の主張を当事者に強いる結果となるのは,相当ではない。