戸田派武甲流薙刀術事件

裁判所 知財高裁
判決日 2018年04月17日
事件名 戸田派武甲流薙刀術事件
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着目点 商標法4条1項8号、10号、15号、19号に規定する他人とは、当該商標が出所を表示する主体とは異なる者と解するのが相当であるとした事例
事件番号 平成29年(行ケ)10078号

判決のポイント

争点

商標法4条各号上の「他人」の解釈

裁判所の判断

(1)商標法4条1項8号,10号,15号及び19号について

商標法4条1項10号,15号及び19号(以下,併せて「本件各号」という。)は,商品若しくは役務の出所の混同防止を図り,又は出所表示機能の希釈化からの保護を図ること等を目的として,商標登録を受けることができない商標を定めるものである。そうすると,本件各号に規定する「他人」とは,当該商標が出所を表示する主体とは異なる者と解するのが相当である。なぜなら,当該商標が出所を表示する主体と「他人」とが同一である場合には,そのような商標を使用したときであっても,当該使用行為が,出所の混同又は出所表示機能の希釈化を招く余地がないからである。

また,商標法4条1項8号は,人又は法人等の団体が自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがないという人格的利益の保護を図ることを目的として,商標登録を受けることができない商標を定めるものである(最高裁平成16年6月8日第三小法廷判決・裁判集民事214号373頁,最高裁平成17年7月22 日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁)。そして,同号が「他人」の氏名,名称等の使用を問題とする以上,当該他人と商標が表示する主体とが異なる者であることが当然の前提であると解される。

(2)本件商標等について

前記認定の諸事実及び本件商標の登録出願の経緯によれば,本件商標が,その登録出願時及び登録査定時に出所として表示するのは,古武道の一流派である本件流派そのものであって,原告及び被告もこれに属するものであると認められる(なお,原告が被告に対し本件流派から破門する旨を通知したことは,上記認定を左右するものではない。)。

そして,本件商標は,その表記に応じて,本件流派(戸田派武甲流薙刀術)を,取引者,需要者に想起させるものであるから,客観的表記に基づく需要者の認識と登録出願の経緯等に基づく出所の主体の間にも齟齬はないものと認められる。

 

この点,審決は,先代宗家から,本件流派の運営及び管理等を原告と共に依頼された被告が流儀代表手続をしたことが不当なものとまでいうことができないとした上で,被告が,振興会の常任理事会において,本件流派の流儀代表者として了承された後,古武道大会等に本件流派の代表者として参加しており,各種新聞,雑誌において,本件流派の代表者として掲載されているといった事情を考慮して,被告は,本件商標の登録出願時及び登録査定時に本件流派との関係において,商標法4条1項8号,10号,15号及び19号に規定する「他人」に該当するということはできないと判断した。

しかしながら,本件商標がその出所として表示するのは,古武道の一流派である本件流派そのものであることは前記のとおりであり,被告個人が,本件商標について,本件流派との関係において,上記「他人」に該当するか否かは,商標法4条1項8号,10号,15号及び19号該当性の判断に,直ちに影響を及ぼすものではない(原告は,被告が商標登録した本件商標が,「他人」である本件流派との関係で無効理由があると主張するものと解される。)。

したがって,審決が,本件商標の出所等を検討することなく,被告個人が,本件流派との関係において,上記「他人」に該当しないことを理由に,商標法4条1項8号,10号,15号及び19号該当性の判断をした点には誤りがあるといわざるを得ない。しかしながら,本件商標について,商標法4条1項8号,10号,15号及び19号に該当しないとの審決の判断は,結論において誤りはないといえる。