光学情報読取装置事件

裁判所 東京地裁
判決日 2018年04月13日
事件名 光学情報読取装置事件
キーワード

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着目点 本件明細書に「所定値」に関する具体的な記載がないことをもって、「所定値以上」となることが設計事項と判断された例
事件番号 平成28年(ワ)27057号

判決のポイント

争点

「光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,射出瞳位置を設定して,露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにしたことを特徴とする」という相違点の容易想到性

裁判所の判断

本件発明は,光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し,光学的センサの中心部に位置する受光素子から出力に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,射出瞳位置を設定するものであるが,この「所定値」については本件明細書に具体的な記載がなく,上記の出力の比のほか,照射光の光量,露光時間などの調整等の結果として,光学センサの中心部と周辺部のいずれでも適切な読取りができるようになることを意味するにすぎないと解される。

また,本件明細書の段落【0011】【0042】の記載によれば,露光時間などの調整は従来から行っていた技術であり,本件発明の構成である射出瞳位置の設定等を採用することで,これが容易となることを意味するにすぎないものと解される。また,露光時間などの調整を行うことが本件特許出願当時に周知であったことは,乙5,13,23にも示されているとおりである。

そうすると,相違点1に係る構成を想到することが前記のとおり容易である以上,光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように射出瞳位置を適宜設定し,周知技術を用いて露光時間を調整するなどして中心部においても周辺部においても読取りが可能となるようにすることは当業者にとって容易であったというべきである。