処理可能な高熱中性子吸収Fe基合金事件
裁判所 | 知財高裁 |
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判決日 | 2018年05月30日 |
事件名 | 処理可能な高熱中性子吸収Fe基合金事件 |
キーワード | |
着目点 | 特許出願手続において代理人の追加選任がされた場合におけるそれ以前から選任されていた代理人に対する拒絶査定の謄本の送達の効力 |
事件番号 | 平成29年(行ケ)10197号 |
判決のポイント
争 点
特許出願手続において代理人の追加選任がされたとき,前から選任されていた代理人宛てに拒絶査定謄本を送達をすれば,適法な送達と認められないか。
裁判所の判断(抜粋)
2 判断
(1) 前記1によると,本件拒絶査定がされ,その謄本が送達された時点では,原告の本願に係る代理人は,A弁理士,B弁理士外2名の弁理士であったところ,A弁理士に対し,本件拒絶査定の謄本の送達がされたことが認められる。
特許法12条は,手続をする者の代理人が二人以上あるときは,特許庁に対しては,各人が本人を代理すると定めていることからすると,A弁理士への本件拒絶査定の謄本の送達は,原告への送達として,適法なものであり,上記送達は有効である。
(2) 本件拒絶査定において,・・・拒絶査定の謄本の送達があった日から4月以内が,拒絶査定不服審判請求をすることができる期間であると定められている(甲16)。・・・
(3) したがって,本件審判請求は,所定の期間経過後にされた点で不適法であり,その補正をすることができないものである。
(4) 原告は,特許出願手続においては,代理人の追加選任がされた場合には,新たな代理人(新たな代理人が複数の場合は,その筆頭代理人)に対し,書類の送付を行う実務運用がされてきたのであって,その実務運用には法規範性が認められ,特許庁長官が,その実務運用に反する名宛人及び場所に送達をした場合,当該送達には方式の瑕疵があり,適法な送達と認められない旨主張する。
日本弁理士会の対庁協議事項集(甲12)には,特許庁が,昭和54年4月1日以前において,特許出願につき,「代理人が追加受任された場合は,新たな代理人を筆頭の代理人とし,特許庁からの手続は,新たな代理人に対して行うが,筆頭代理人の変更を希望しない旨の申出があったときは,この限りでない。」との取扱いを行っていた旨記載されており,日本弁理士会の対庁協議事項集(甲13)には,平成28年3月17日においても,同様の取扱いを行っていたことが記載されている。
しかし,特許法12条は,前記のとおり,代理人の個別代理を定めているから,特許庁が上記のような取扱いをしており,それが対庁協議事項集に記載されているからといって,新たな代理人以外の代理人に対する送達の効力を否定することはできないものと解される。特許庁の上記取扱いに法規範性を認めることはできず,原告の上記主張を採用することはできない。
そして,上記の結論は,A弁理士に任務懈怠があったとしても,左右されるものではない。