半田フィーダ事件
裁判所 | 知財高裁 |
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判決日 | 2018年06月07日 |
事件名 | 半田フィーダ事件 |
キーワード | |
着目点 | 被告製品が原告製品(半田フィーダ)の形態模倣に当たるか等を判断した事例 |
事件番号 | 平成30年(ネ)10009号 |
判決のポイント
争 点
形態模倣に当たるか、原告商品の著作物性、営業秘密性
裁判所の判断(抜粋)
(1) 争点(1)ア(形態模倣に当たるか)について
ア 原告商品と被告各商品との共通点について
控訴人は,原告商品は,直針状の出口ノズルがフィーダ本体部の先端から突き出た形状で,配線チューブ等がフィーダ本体上部後端からまっすぐに伸びている上,小型かつ軽量である点に特徴があるところ,被告各製品もこの点において共通する形態及び構成を有していると主張する。
この点につき検討するに,・・・正確に位置決めをしたり,他の機器との干渉を防いだりするために,供給する半田の出口に当たる出口ノズルを細長い直針状の形態とすることは,半田フィーダとしての機能を確保するために不可欠な形態というべきである。・・・なお,商品の重量そのものは,不競法2条4項が定める「商品の形態」に当たるとはいえない。・・・
ウ 以上によれば,原告商品と被告各商品の形態に共通する点があるとは認められるものの,控訴人が主張する原告商品の特徴的形状は,いずれも半田フィーダという商品が通常有する形態にすぎず,上記イにおいて説示した原告商品と被告各商品の形態の相違点,及び原判決が説示したその余の相違点を総合考慮すると,原告商品と被告各商品の形態が実質的に同一であるということはできない。・・・
(2) 争点(2)ア(原告商品の著作物性)について
ア 控訴人は,産業用の利用を目的とする機器であっても,創作性を備えるものについては,美術の著作物として著作物性が肯定されるべきであるとした上で,原告商品は控訴人代表者の創意工夫に基づいて制作されたものであって,直針状の出口ノズルがフィーダ本体部の先端から突き出た形状で,配線チューブ等がフィーダ本体上部後端からまっすぐに伸びており,小型かつ軽量であって,その全体は端整かつ鋭敏で優雅な美しさが表現されているから,美術の著作物に当たると主張する。
イ この点につき検討するに,著作権法上の美術の著作物として保護されるためには,仮にそれが産業用の利用を目的とするものであったとしても,美的観点を全く捨象してしまうことは相当でなく,何らかの形で美的鑑賞の対象となり得るような創作的特性を備えていなければならないというべきである。
・・・原告商品の外観からは,社会通念上,この機器を動作させるために必要な部材を機能的観点に基づいて組み合わせたもの,すなわち技術的思想が表現されたものであるということ以上に,端整とか鋭敏,優雅といったような何かしらの審美的要素を見て取ることは困難であるといわざるを得ず,原告商品が美的鑑賞の対象となり得るような創作的特性を備えているということはできない。・・・
(3) 争点(3)(不競法2条1項7号の不正競争に基づく請求の可否(営業秘密性))について
・・・イ 秘密管理性について
・・・控訴人と被控訴人堀内電機との間で,本件情報を秘密として管理することに合意したと認めるに足りる証拠はなく,また,控訴人において,本件情報を秘密として管理していたことを認めるに足りる的確な証拠も見当たらない。
ウ 非公知性について
上記アのとおり,本件情報は,原告商品の外観自体から,又はこれを解析することによって容易に知り得るものである。
そして,原告商品は,上記イにおいて説示したとおり,被控訴人堀内電機に守秘義務を課すことなく販売され,更にシャープタカヤを含む第三者に対して販売されているというのであるから,原告商品から容易に知り得る本件情報が非公知性を備えたものと認めることはできない。
エ 小括
以上によれば,本件情報が営業秘密に当たるということはできず,この点についての控訴人の主張を採用することはできない。