放熱フィン付き検査用照明器具事件
裁判所 | 知財高裁 |
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判決日 | 2018年06月27日 |
事件名 | 放熱フィン付き検査用照明器具事件 |
キーワード | |
着目点 | 部分意匠の破線で示した部分からのみ把握できる形態は、登録意匠と引用意匠との共通点と認められないとした事例 |
事件番号 | 平成30年(行ケ)10021号 |
判決のポイント
争点
本件意匠と甲1、甲2意匠は類似するか。
裁判所の判断
⑴ 本件登録意匠と甲1意匠との共通点について
ウ 原告は,本件登録意匠(本件実線部分)と甲1意匠(甲1相当部分)は,共通点A及びBのほかに,後フィン部の後端面には電源ケーブルの引き出し口が存在しない,あるいは電源ケーブルが引き出されていない形態を有している点(原告主張共通点)で共通するにもかかわらず,本件審決には,原告主張共通点の認定を看過した誤りがある旨主張する。
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一方,原告主張共通点に係る「後フィン部の後端面には電源ケーブルの引き出し口が存在しない,あるいは電源ケーブルが引き出されていない形態」は,本件実線部分及び甲1相当部分から視覚を通じて具体的に認識できる形態ではなく,別紙1及び3の各図面の破線で表した部分において,各軸体及び各フィン部の前方の部材の側周面から配線ケーブル又は電源ケーブルが引き出されていることから,「後フィン部の後端面には電源ケーブルの引き出し口が存在しない,あるいは電源ケーブルが引き出されていない」ことを間接的に把握できるにとどまるものである。
そうすると,原告主張共通点は,意匠登録出願の願書に「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分」として特定された範囲(本件実線部分及び甲1相当部分)から,視覚を通じて具体的に認識できる形態とはいえないから,本件登録意匠(本件実線部分)と甲1意匠(甲1相当部分)の共通点と認めることができない。
(2) 本件登録意匠と甲1意匠との類否について
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以上のとおり,本件登録意匠と甲1意匠は,共通点Aに係る構成態様(全体の構成態様)及び共通点Bに係る構成態様(フィン部の数)は,需要者の注意を強く惹くものとはいえないのに対し,差異点a及びbに係る各フィン部の形状の差異は,需要者が一見して気付く差異であって,本件登録意匠と甲1意匠を別異のものと印象付けるものであること,本件登録意匠と甲1意匠には,上記差異のほかに,差異点cないしeに係る差異もあることを総合すると,本件登録意匠と甲1意匠は,視覚を通じて起こさせる美観が異なるものと認められるから,本件登録意匠は甲1意匠に類似するということはできない。