TOP-SIDER事件

裁判所 知財高裁
判決日 2018年09月26日
事件名 TOP-SIDER事件
キーワード

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着目点 商標法53条1項、通常使用権者の不正利用による取消審決が支持された事例
事件番号 平成30(行ケ)10053号

判決のポイント

争点

 商標の使用態様が他人の商品等と混同を生ずるか

裁判所の判断

1 審決の理由中,本件商標と本件使用商標が類似していること,本件使用商品が本件商標の指定商品に含まれること,X社が本件商標の通常使用権者であり,本件使用商品をY社(小売業者)に譲渡し又は引き渡したこと,X社が本件使用商標を本件使用商品に使用していたことを原告が知っていたことについては,いずれも証拠及び弁論の全趣旨により認められる。

2 取消事由について

(1) 引用商標の独創性,本件使用商標と引用商標の類似性の程度

ア 引用商標は,雲を想起させる図形の内側に,「SPERRY」の欧文字を小さく表し,その下により大きく表記された「TOP-SIDER」の欧文字とヨットの図形を配した構成からなり,欧文字部分,雲を想起させる図形及びヨットの図形からなる全体の構成は,独創性が高いものといえる。

イ 他方,本件使用商標の全体の外観は,「SPERRY」の文字の有無以外は,引用商標と同一である。

ウ 上記のとおり,本件使用商標は,独創性の高い引用商標と類似しており,かつその類似性の程度は極めて高いものといえる。

(2) 引用商標の周知性について

ア 前提事実

以下の各証拠及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。

 () 被告は,アメリカのマサチューセッツ州でAによって創業された会社に端を発している。創業者であるAは,愛犬の足の裏から着想を得て,ヨット等の船舶のデッキ上でも滑りにくい形状をしたラバー製の靴底を持つデッキシューズを開発し,1935年(昭和10年)に「トップサイダー(TOP-SIDER)」としてこれを発売したところ,被告の靴は,アメリカ海軍のオフィシャルシューズとして採用されたりするなどアメリカにおいて人気を博した。

 () 日本国内において,被告の靴は,昭和46年には銀座のメンズショップで販売されていた。被告の靴は,昭和49年から国内流通が始まり,昭和57年には当時300店舗を展開していたチヨダ靴店においても販売されていた。また,昭和63年から平成4年までは株式会社アシックス(以下「アシックス社」という。)が,平成5年からはアキレス株式会社(以下「アキレス社」という。)が,それぞれ被告と独占販売契約を締結して被告の靴を販売していた上,平成23年9月からは,靴の大手小売店であるABCマートが,日本における販売代理店となって,被告の靴を販売するようになった。これらの靴は,いずれも「スペリー・トップサイダー」,「スペリートップサイダー」あるいは「トップサイダー」というブランド名で販売されていた。

なお,平成22年3月から平成25年2月までの3年間における被告の靴のうち, 

() 以下のとおり,昭和52年から平成25年までの間に,被告の靴に関する記載が,雑誌や新聞に数多く掲載され,さらに,小説や辞書にも掲載された。

c 株式会社小学館から平成6年1月に出版されたランダムハウス英和大辞典(第2版)には,「top-sider」の意味として,「商標 トップサイダー:柔らかい皮,布製でかかとが低いゴム製のカジュアルシューズ」と記載されている。また,平成17年3月に文庫版が出版された村上春樹の小説「海辺のカフカ」にも「トップサイダーのスニーカー」という記載がある。

 () X社と取引していたY社は,本件使用商標に関して,「トップサイダー 1935年にアメリカで誕生して以来,「デッキシューズ」といえばこのブランド。」との紹介文を付して,自社のウェブサイト上で表示していた。

イ 判断

上記認定事実からすると,引用商標は,平成25年1月28日頃には,被告の靴(デッキシューズ)を表示するものとして,靴(デッキシューズ)の取引者及びその需要者である一般消費者の間で,広く知られていたものと認められる。

(3)本件使用商品と引用商標が付された商品との関連性

本件使用商品であるシャツと引用商標が使用されていた靴(デッキシューズ)は,いずれも身に着けて使用するアパレル製品であって,同じブランドで統一されてコーディネイトの対象となったり,同一の店舗内で販売されたりすることがあるものということができ,現に証拠によると,被告の靴が,衣料品店でシャツなどの衣料品と一緒に販売されている事例があることが認められる。

また,シャツと靴(デッキシューズ)について,同一の営業主によって製造されることもあり得るものである。

加えて,本件使用商品は,一般消費者向けのシャツであって,引用商標が付されていた靴(デッキシューズ)も,一般消費者向けの商品であると認められるものである。

したがって,本件使用商品と引用商標が付された靴とは,販売場所や需要者を共通にするなど高い関連性を有するものということができる。

(4) 本件商標の使用態様等について

本件使用商標には,本件商標にはない,雲を想起させる図形とヨットの図形が付加されており,本件使用商標は引用商標と外観上極めて類似したものとなっている。

また,本件使用商標は,本件使用商品の襟の部分に付されていたほか,本件使用商品には本件使用商標を記載した下げ札が二つ付されており,本件使用商標は,取引者や需要者が容易に認識できるような形で使用されていた。

(5) 「他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをした」かどうかについての判断

以上のとおり,引用商標は,被告の靴(デッキシューズ)を表示するものとして取引者及び需要者の間で,広く知られているところ,本件使用商品であるシャツと引用商標が使用されている靴(デッキシューズ)が関連性の高いものであることや,本件使用商標は,本件商標に雲を想起させる図形とヨットの図形が付加されていて,引用商標と極めて類似するものであることからすると,本件使用商品に接した取引者や需要者たる一般消費者にとって,本件使用商品が被告の業務に係る商品であるとの混同を生じるおそれが十分にあるというべきである。

結論

以上のとおり,商標法53条1項に基づいて,本件商標を取り消すべきとした本件審決の認定判断に誤りはなく,原告の請求には理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

 

参考:

登録商標(取消審決):

(25類(洋服等))

 

通常使用権者の使用態様:

(シャツ)

 

引用商標:

(デッキシューズ)