マットレス付き介護用ベッド事件
裁判所 | 知財高裁 |
---|---|
判決日 | 2018年11月28日 |
事件名 | マットレス付き介護用ベッド事件 |
キーワード | |
着目点 | 立体商標が使用により自他商品識別力を獲得したといえるかについて、判断された例 |
事件番号 | 平成30年(行ケ)10060号 |
判決のポイント
争 点
商標法3条2項に該当しないという審決の判断が誤っているか。
裁判所の判断(抜粋)
1 取消事由(商標法3条2項該当性の判断の誤り)について
(1) 本願商標及びその使用商品について
ア 本願商標は,別紙1記載のとおり,へッドボード,フットボード,底板(ボトム)及び土台からなるベッドの上にマットレスが設置された,マットレス付きベッドの立体的形状である。・・・
イ・・・前記(ア)及び(イ)によれば,原告ベッドにマットレスを着設した商品(マットレス付き原告ベッド)は,原告ベッドの機能(底板の背部の背上げ機能及び膝部の膝上げ機能,土台の傾斜機能)により,本願商標と同一の形状をとることができることが認められるから,本願商標を付した商品であるものと認められる。
したがって,マットレス付き原告ベッドは,本願商標の使用商品である。
(2) 本願商標の使用による識別力の獲得について
・・・
イ 検討
(ア) 本願の指定商品(「介護用マットレス,介護用ベッド,介護用マットレス付きベッド」)の需要者は,介護用品の取引者,介護用品の利用者及びその家族,介護福祉関係者等であることが認められる。・・・
(イ) 前記(1)イ(ウ)認定のとおり,マットレス付き原告ベッドは,原告ベッドの機能(底板の背部の背上げ機能及び膝部の膝上げ機能,土台の傾斜機能)の組合せにより,本願商標と同一の形状をとることができることからすると,マットレス付き原告ベッドの購入者又は利用者は,その使用時に,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形状を認識する機会があり得るものといえる。
しかしながら,本願商標は,別紙1記載のとおり,ベッドの土台が,頭側を上にして傾斜し,ベッドの底板が,頭側を上にして足側にかけて全体としてS字状に屈曲し,背部が立ち上がり,腰部から足部にかけての中間の膝部が起伏し,かつ,頭側の端部がヘッドボードの上端部の右方に近接して位置した形状であり,マットレス付き原告ベッドを本願商標と同一の形状とするには,原告ベッドの上記機能を組み合わせて,土台の傾斜角度,底板の背部の立ち上げ角度及び膝部の起伏の高さなどを調節して設定する必要があること,マットレス付き原告ベッドの利用者は,通常は,マットレスの上に布団をかけた状態で原告ベッドを使用することに照らすと,マットレス付き原告ベッドの購入者又は利用者は,その使用時に,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形状を認識する機会は多いものとは認められないし,また,その形状を認識したとしても,それが印象に残ることは少ないものと認められる。・・・
(ウ) マットレス付き原告ベッドを含む「楽匠Zシリーズ」の商品の新聞広告及び雑誌広告には,①人が横たわっている,マットレス,枕及び掛け布団を設置した,底板及び土台が頭側に傾斜した状態のマットレス付きベッドを表したB商標,②マットレス,枕及び掛け布団を設置した,土台が頭側に傾斜し,底板の背部が立ち上がった状態のマットレス付きベッドを表したD商標,③マットレス及び枕を設置した,土台が頭側に傾斜し,底板の背部が立ち上がった状態のベッドに人が枕に頭をのせ,背中を付けて座っているマットレス付きベッドを表したE商標の写真が掲載されていることは,前記ア(イ)認定のとおりである。
しかしながら,これらのB商標,D商標及びE商標の写真は,人,枕及び掛け布団が写されている部分を除いても,別紙1記載の本願商標の形状の写真と一致しないことに照らすと,B商標,D商標及びE商標を掲載した新聞広告及び雑誌広告から,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形状を認識することはできないものと認められる。・・・
(エ) 前記ア(エ)のとおり,本件アンケートは,福祉用具レンタル卸業者,貸与業者及び販売業者,ケアマネージャー(介護支援専門員),福祉用具鑑定士,福祉用具プランナー等を対象者とするものであり,介護用品の利用者及びその家族等の一般需要者が対象者に含まれていないから,本件アンケートの結果は,需要者(前記(ア))の認識を適切に反映したものとは認められない。
(オ) 以上によれば,原告によるマットレス付き原告ベッドの販売(前記ア(ア)),新聞広告,雑誌広告及びテレビCMによる広告宣伝(前記ア(イ),(ウ)),本件アンケートの結果(前記ア(エ))を総合考慮しても,本件審決時(審決日平成30年3月22日)までに,本願商標が,マットレス付き原告ベッドを表示するものとして,需要者の間に広く認識されるに至ったものと認めることはできない。
したがって,本願商標は,マットレス付き原告ベッドについて,「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」(商標法3条2項)に該当するものとはいえない。
*原告が商標登録を受けようとした立体商標は、下記の構成からなる