ランプシェード事件
裁判所 | 東京地裁 |
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判決日 | 2018年12月27日 |
事件名 | ランプシェード事件 |
キーワード | |
着目点 | 立体商標が使用により自他商品識別力を獲得したといえると判断された例 |
事件番号 | 平成29年(ワ)22543号 |
判決のポイント
争 点
商標法3条1項3号該当性について
裁判所の判断
ア 原告商標は,ランプシェードに採用し得る一形状である原告標章のみからなるものであり,商標法3条1項3号に該当することは当事者間に争いがなく,本件においては,原告商標が同条2項の「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」(自他商品識別力を有する商標)に該当するか否かが争われている。
ここで,商品の形状のみからなる商標が,使用により自他商品識別力を獲得したといえるか否かは,当該商品の形状,使用開始時期及び使用期間,使用地域,商品の販売数量,広告宣伝のされた期間・地域及び規模,当該形状に類似した他の商品の存否などの事情を総合考慮して判断するのが相当である。
イ 原告商標について検討すると,構成要素①ないし⑤を有する原告標章は一般的なランプシェードの形状としてありふれたものであるとはいえず,特徴的な形状として需要者に対して強い印象を与えるものといえる。遅くとも昭和51年に日本国内における販売が開始され,日本全国で約40年間にわたり継続して販売されており,平成11年から平成26年までの間の原告商品の販売数量は7万4627台であり、販売数量は増加傾向にあること((1)ア,イ),ヤマギワ又は原告日本法人が定期的に全国の多数の顧客に対して配布していた商品カタログにおいて,原告商品の写真や原告商品が世界のロングセラー商品であること等の説明が掲載され,原告標章を印象づける広告が繰り返しされていること(同ウ),多数の出版物において,原告商品の写真や説明文が掲載され,原告商品が世界のロングセラー商品であり,原告標章が優れたデザインであることが強調されていること(同エ),原告商品が平成9年度通商産業省選定グッド・デザイン外国商品賞を受賞したこと(同オ),高等学校の教科書にも原告商品の写真や説明文が掲載されていること(同カ)が認められ,これら原告商品の販売状況や広告宣伝状況等の事実からすると,原告商品は日本を含む世界のロングセラー商品として長年にわたり,原告やその関連会社が販売する代表的な商品として,インテリアの取引業者や照明器具等に関心のある一般消費者に認識されていると認めることができる。なお,被告商品を含む,原告標章と同一又は類似の形状の同種商品が日本国内外において販売されていたことはうかがわれるものの,そのような商品が日本国内において一般的に流通していたことを認めるに足りる証拠はない。
以上によれば,ランプシェードとして特徴的な形状を有する原告標章からなる原告商標は,原告商品の形状として使用された結果,原告の業務に係る商品であることを表示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたといえ,これに反する被告の主張は採用することができない。
ウ したがって,ランプシェードの立体的形状である原告商標は,商標法3条2項の「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」(自他商品識別力を有する商標)に該当し,原告商標に同条1項3号の無効理由があるとは認められない。