移動ロボットのコンテキスト動作生成システム事件

裁判所 知財高裁
判決日 2018年12月27日
事件名 移動ロボットのコンテキスト動作生成システム事件
キーワード

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着目点 引用例1に記載された課題は程度の問題であり、相違点に係る構成を採用することを積極的に排除しているとまではいえないとして、阻害事由がないと判断された例
事件番号 平成29年(行ケ)10177号

判決のポイント

争 点

相違点2(下記)に関し、引用例1と引用例2とを組み合わせることは容易か。

 

(イ) 相違点2

コマンド・タグに関して,\本願発明の「コマンド・タグ」は,「動作を表現する図形的なシンボルを含」み,言葉を話すことと同時の動作が,「前記図形的なシンボルに一致する動作」であるのに対して,\引用発明の開始制御タグや終了制御タグは,図形的なシンボルを含むものではない点。

 

裁判所の判断

イ 上記周知技術における絵文字や顔文字は,いずれも「図形的なシンボル」であるということができる。

そうすると,メッセージの解析結果に基づいてメッセージの内容を音声により読み上げるとともにその読上げに対応させてロボットの動作を制御するシステムに関する発明である引用発明において,メッセージに埋め込む動作制御情報として上記周知技術に係る顔文字や絵文字すなわち「図形的なシンボル」を採用することの動機付けがあることは明らかである。

ウ 阻害要因の有無

引用例1の記載(【0002】,【0005】~【0007】)によれば,電子メールの内容に含まれる顔文字によってロボットの矩体全体又は矩体に属する部分を動かすよう制御する従来技術においては,顔文字が使用される位置との関係から,「一文につき一動作を行わせるのがせいぜいであり,文章では伝わりにくい感情や雰囲気を詳細に表現するのが困難であった」とともに,「一文中の特定箇所を読み上げている時にロボットを動作させるには,その特定箇所の近辺に顔文字を埋め込む必要がある」ため,「感情や雰囲気を詳細に表現するためには,顔文字を文章中に多数埋め込む必要がある」こととなるが,「このような方法で電子メールを作成すると,電子メールを他の方法で表示したときにたいへん見づらいものとなる」という課題があるところ,引用発明は,これを解決することを目的とするものと認められる。もっとも,引用例1においては,「メッセージの内容の出力は,どのような形態で行ってもよく,例えば,音声,表示その他の出力形態により行うようになっていればよい」とされており(【0012】),文字による表示を必ず伴うものとはされていない。

また,上記のような引用発明の解決すべき課題は,いずれもいわば程度の問題ということができるものであり,例えば,文章の性質等から感情や雰囲気を詳細に表現する必要がなく,簡便に表現できれば足りるような場合についてまで,ロボットの矩体の動作制御の手掛かりとして顔文字を使用することを積極的に排除する趣旨まで看取することはできない。

さらに,前記のとおり,テキスト中の絵文字や顔文字によりロボットの動作を制御することは,本願優先日前における周知技術であったところ,引用発明において,メッセージに埋め込む動作制御情報として顔文字や絵文字を採用することができないという技術上の理由も認められない。

そうである以上,引用発明には,電子メール中に含まれる顔文字に従ってロボットを動作させることが記載されている他の文献を組み合わせることに阻害要因があるということはできない。このことは,引用例1が引用例2記載の技術を従来技術と位置付けていることを考慮しても異ならない。

エ したがって,引用発明において,相違点2に係る本願発明の構成を得ることについては,上記周知技術を採用することの動機付けがあり,阻害事由はないことから,当業者が容易に想到し得ることといえる。