SHI-SA事件

裁判所 知財高裁
判決日 2019年03月26日
事件名 SHI-SA事件
キーワード

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着目点 両商標において最も大きな構成部分が異なること等からすると、両商標の外観は、相紛れるおそれはないと判断した事例
事件番号 平成29年(行ケ)10205号

判決のポイント

争 点
商標法4条1項15号該当性

裁判所の判断(抜粋)
1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性)について
・・・
(3) 対比
ア 外観
(ア) 共通点
 本件商標と引用商標は,アルファベットの文字(「SHI‐SA」と「PUmA」)が横書きで大きく表示されており,最も大きな構成部分である点,その右上方に,四足動物が右側から左上方へ向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれている点で共通する。
 また,本件商標における「SHI‐SA」の文字と引用商標における「PUmA」の文字は,各文字が縦長の長方形の枠内にはめ込まれたかのように太字で表記され,曲線部分を,直線を直角に曲げた形に近づくように表記されている点で,共通している。
 そして,両商標における動物図形は,その向きや基本的姿勢のほか,跳躍の角度,前足・後足の縮め具合・伸ばし具合や角度,胸・背中から足にかけての曲線の描き方について,似通った印象を与える。
(イ) 差異点
 本件商標において大きく表示された文字は「SHI‐SA」であり,引用商標において大きく表示された文字は「PUmA」であって,アルファベットの文字数,末尾の「A」を除き使用されているアルファベットの文字が異なるほか,本件商標においては「SHI」と「SA」の間にハイフン(‐)が表記されている点や,字体の線の太さや太線が直角に曲がった部分の内側の輪郭線が多くは曲線であるか否かにおいて異なっている。
 また,本件商標においては,大きく表示された「SHI‐SA」の文字の下に2段にわたって「OKInAWAn ORIgInAL」及び「gUARDIAn ShIShI-DOg」という文字が,比較的小さく表記されているのに対し,引用商標においては,大きく表示された「PUmA」の文字の下には何も記載されていない。
 そして,両商標における動物図形については,本件商標の動物の方が引用商標の動物に比べて頭部が比較的大きく描かれているほか,本件商標においては,口の辺りに歯のようなものが描かれ,首の部分にギザギザの飾りのような模様が,前足と後足の関節部分にも飾り又は巻き毛のような模様が描かれ,尻尾は全体として丸みを帯びた形状で先端が尖っており,飾り又は巻き毛のような模様が描かれているほか,動物図形の内側に輪郭線が描かれている。これに対し,引用商標の動物図形には,模様のようなものは描かれず,全体的に黒いシルエットとして塗りつぶされているほか,尻尾は全体に細く,右上方に高くしなるように伸び,その先端だけが若干丸みを帯びた形状となっている。
(ウ) 以上の(ア)及び(イ)に照らすと,本件商標と引用商標とは,「SHI‐SA」又は「PUmA」の文字と動物図形との組合せによる全体的な形状が共通しているものの,両商標において最も大きな構成部分である「SHI‐SA」又は「PUmA」の文字部分の文字数,使用されている文字,ハイフンの有無が異なることや,上記文字部分の下の2段にわたる文字部分の有無が異なること等からすると,両商標の外観は,その違いが明瞭に看て取れるのであって,相紛れるおそれはないものである。
イ 観念
 本件商標からは,沖縄の伝統的な獅子像である「シーサー」の観念が生じ,引用商標からは,ネコ科のほ乳類である「ピューマ」又は「PUMA」ブランドの観念が生じる。
ウ 称呼
 本件商標からは,「シーサオキナワンオリジナルガーディアンシシドッグ」,「シ・サオキナワンオリジナルガーディアンシシドッグ」,「シサオキナワンオリジナルガーディアンシシドッグ」等並びに「シーサー」又は「シーサ」の称呼が生じ,引用商標からは,「ピューマ」又は「プーマ」の称呼が生じる。
エ 検討
 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観においても,観念や称呼においても異なるものであり,本件商標及び引用商標が同一又は類似の商品に使用されたとしても,商品の出所につき誤認混同が生ずるおそれがあるとはいえないから,本件商標は引用商標に類似するものではない。
(4) 原告の主張について
ア 原告は,引用商標は,世界中で周知著名となっていたこと,指定商品の需要者である一般消費者は,商品に付された商標の一見した印象によって商品の出所を識別することが多いこと,被服類を購入しようとする需要者は,デザイン性,ファッション性に重きを置いて商品選択する場合が多く,図形及び文字標章の組合せからなる結合商標において,図形部分がデザイン性,ファッション性を有している場合は,需要者は,図形に着目して商品識別をすることから,図形において外観類似が認められる以上,文字部分の相違は,本件商標と引用商標との類似性に大きく影響を与えないのであって,需要者等は,本件商標の大きく表された欧文字及び動物図形又はその組合せに着目して,特定の出所を想起し,混同を生じるおそれがある旨主張する。
 しかし,本件商標において,「SHI‐SA」及び「OKInAWAn ORIgInAL gUARDIAn ShIShI-DOg」という文字部分は,その面積の大きな部分を占めている。需要者が,本件商標につき,全体に占める面積が比較的小さい動物図形部分のみに着目するとは考え難く,引用商標が世界的に周知著名な商標であること等,原告が主張する事情によってこの判断が左右されるということはできないから,原告の上記主張は採用することができない。
・・・
(5) よって,本件商標が商標法4条1項11号に該当すると認めることはできない。
2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性)について
(1) 本件商標が引用商標に類似する商標であるということはできないことは,前記1のとおりであり,前記1において判示したのと同様の理由で,本件商標が「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標」であるということはできないから,本件商標が商標法4条1項15号に該当すると認めることはできない。