直接法による複合材料部品の製造のための一定の幅を有する新規の中間材事件
裁判所 | 知財高裁 |
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判決日 | 2019年03月26日 |
事件名 | 直接法による複合材料部品の製造のための一定の幅を有する新規の中間材事件 |
キーワード | |
着目点 | 訂正を新規事項の追加として認めなかった特許取消決定を、取り消した事例 |
事件番号 | 平成30年(行ケ)10032号 |
判決のポイント
争 点
本件特許明細書等の記載を総合すれば,各訂正事項を導くことができるか。
裁判所の判断(抜粋)
⑵ 訂正の適否について
ア 訂正事項2に係る訂正について
(ア) 訂正事項2は,請求項1の「a)リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程」を,本件訂正後の請求項1の「a)拡幅バーを有する拡幅器,次いで複数のストランド又は長繊維に寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に,複数のストランド又は長繊維を通過させることによって,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないようにし,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程」に訂正するものである。
本件決定は,本件特許明細書等には,本件訂正後の請求項1の「複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しない」という事項(事項A)についての直接的ないし明示的な記載がなく,この事項が具体的にどのような技術的事項を意図しているのかを明確に把握するために必要な記載も見当たらないため,本件特許明細書等の記載を総合しても,事項Aを導くことができるとはいえないから,訂正事項2に係る訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められず,新規事項の追加に当たり,訂正要件に適合しない旨判断した。
(イ) そこで検討するに,・・・
これらの記載事項によれば,本件明細書には,「本発明」の実施の形態として,1つのストランド(長繊維の集合体)又は複数のストランド(各々が長繊維の集合体)から成る「リボン」を作製するに当たり,1つ又は複数のストランドを,拡幅バーにより幅を拡幅し,次いで,拡幅したストランドを所与の幅の開口部を規定する寸法取り器・・・上を通過させることによって,所望の幅を有する一方向層が得られること,これにより一方向層の層の幅は,材料中のいかなる間隔又は重なり部分をも最小にし,さらに回避することによって調整することができ,その結果,層の内側のストランド間に緩い空間が存在しないことの開示があることが認められる。
そして,複数のストランドの集合体(各々が長繊維の集合体)が,「接近して配置され,間隔又は重なり部分をも最小にし,さらに回避する」とは,「間隔が存在しない」ことと同義であると解されるから,「複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しない」ようにして,「複数のストランド又は長繊維」を所望の幅に作製しているものと理解することができる。
そうすると,訂正事項2に係る訂正は,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないものと認められるから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。