コメント表示方法事件

裁判所 知財高裁
判決日 2020年02月19日
事件名 コメント表示方法事件
キーワード

着目点 主引例と副引例とは前提となるシステムが異なり、また主引例に副引例の技術を適用する動機付けとなる課題が存在しないと判断された例
事件番号 平成31年(行ケ)10038号

判決のポイント

争 点

甲1発明に甲2等技術を適用して本件特許発明1を容易に発明をすることができたか。

裁判所の判断

以上のとおり,甲1発明において,ライブ配信者は,レイアウト(領域)ごとの人数の制限や,レイアウト(領域)ごとの閲覧者の指定による制限を行うことができ,ライブ閲覧者は,閲覧するレイアウト(領域)のみを選択して閲覧が可能であるから,同一の画面に無制限に多数の発言が書き込まれることが当然に予想されるとはいえない。

 甲1の図9のa,cにおいては,レイアウト(領域)6が,レイアウト(領域)2,3,4,5と,一部の領域が重なっているが,レイアウト(領域)とその属性は,ライブ配信者が指定するものであり,ライブ閲覧者は,レイアウト(領域)を選択して閲覧するから,図9に示されたレイアウト(領域)が重なっていることが,直ちに,甲1発明において,多数の発言が重なることが当然であることを示すものではない。

 甲1の段落【0016】は,ユーザが「ライブ画面の好きな所(領域)にメッセージなどの書き込みや動画,静止画などを挿入することができる。」との記載があるが,上記で述べたことからすると,上記段落【0016】の記載があるからといって,同一の画面に無制限に多数の発言が書き込まれることが当然に予想されるとはいえない。

 そして,甲1には,同一の画面上で多数の発言が重なって視認性が低下することについて記載されておらず,そのことを示唆する記載があるとも認められない。

 

また,甲1発明と甲2及び3に記載された技術事項とは,文字を表示する点では共通するものの,表示される文字は,甲1発明では,ライブ閲覧者が入力するチャット文であるのに対し,甲2及び3に記載された技術事項は,メインのテレビ放送の映像に含まれる文字と文字放送の文字であるから,対象とする文字が異なる。

 したがって,甲1発明と甲2及び3に記載された技術とは,技術が大きく異なるといえるのであり,プログラミングに関するものであることや動画と文字情報を配信するものであるということ,文字と文字の重なり合いが生じないようにする技術であることだけでは,甲1発明に甲2及び3に記載された技術を適用する動機付けがあると認めることはできないから甲1発明に甲2及び3に記載された技術を適用して本件特許発明1を容易に発明することができたとはいえない。

   キ 原告は,甲1発明と甲2等技術は,視認性の低下という課題が共通すると主張するが,前記のとおり,甲1発明は視認性の低下という課題を有しないため,甲1発明と甲2等技術が課題において共通するとは認められない。

   ク 以上によると,その余の点を判断するまでもなく,甲1発明に甲2等技術を適用して本件特許発明1を容易に発明をすることができたと認められないから,本件審決の判断に誤りはない。