ゲームプログラム事件
裁判所 | 知財高裁 |
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判決日 | 2021年06月29日 |
事件名 | ゲームプログラム事件 |
キーワード | |
着目点 | 特定のアイテムは、上限なく保持できるものであるから、上限のあるアイテムボックスに対応付けて記憶する、は新規事項であると判断された例 |
事件番号 | 令和2年(行ケ)10147号 |
判決のポイント
対象特許
【請求項1】(下線は問題となった要件)
コンピュータに,
アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定機能と,
前記アイテムがユーザに付与された際に自動的に,前記アイテムのアイテム情報,および,前記条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較機能と,
前記比較機能によって比較された結果,前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしているアイテムを,当該アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換機能と,
前記変換機能によって数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換機能と,
前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能とを実現させるゲームプログラム。
レアリティの低いR,Nのカードが特定のアイテムに変換された様子を示す図
争 点
新規事項
裁判所の判断
(2) 当初明細書には,「アイテムボックス」について,段落【0051】にのみ記載がある。そして,「不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる」との記載から,当初明細書に記載された「アイテムボックス」は,アイテムを収納するための構成であって,かつ,アイテムの収納上限が設けられているものと認められる。このことは,「ユーザが保有することができるカードの数には上限がある」(段落【0005】)との記載とも整合すると認められる。
一方,当初明細書には「特定のアイテム」について,アイテム付与部によって付与されるアイテムとは異なる種類のアイテム(段落【0049】)であり,アイテム付与部により実行されるアイテム付与ステップによってユーザに付与された「アイテム」が,アイテム変換ステップにより変換され(段落【0026】,【0035】,【0039】,【0048】),特定アイテム付与ステップによりユーザに付与される(段落【0040】,【0050】)ものであって,上限なくユーザが所持可能とすることができるものである(段落【0031】,【0040】,【0050】,【0052】)と記載されている。
そして,収納上限が設けられているアイテムボックスに「特定のアイテム」を収納すると,「特定のアイテム」を上限なくユーザが所持することは不可能であるから,当初明細書に接した当業者は,「特定のアイテム」は,「アイテムボックスに収納して保持する」ものではないと理解すると解される。
そうすると,「『特定のアイテム』を『アイテムボックス』に収納して保持すること」を意味する「前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能」との新たな発明特定事項は,当業者によって当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内のものであるとはいえない。