パールアパタイト事件
裁判所 | 知財高裁 |
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判決日 | 2021年06月30日 |
事件名 | パールアパタイト事件 |
キーワード | |
着目点 | 登録査定時、「アパタイト」の語が特定の意味合いを理解させるものとは言えないとして、品質を直接的に表示するものとは認められないとした例 |
事件番号 | 令和3年(行ケ)10010号 |
判決のポイント
対象商標
パールアパタイト(標準文字)
争 点
商標法4条1項16号該当性について
裁判所の判断
ア 「パールアパタイト」の語が,一般の辞書等に掲載されていることを認めるに足りる証拠はない。
一方で,本件商標を構成する「パール」の文字部分は,「真珠」の意味を有するものと認められる(甲3,11,12)。
イ 原告は,本件商標の登録査定時において,「アパタイト」の語が,取引者,需要者の間で,歯の再石灰化を促し美白効果のある「ハイドロキシア パタイト」又は光触媒応用製品に適用可能な「アパタイト」を意味する語として,一般的に広く認識されていた旨主張するので,以下において判断する。
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(イ) 前記(ア)の認定事実によれば,①歯を白くする美白効果のある歯磨き剤として広告宣伝された,「薬用ハイドロキシアパタイト」を含有する「アパガードM」がヒット商品となり,新聞,雑誌等で取り上げられた 結果,「薬用ハイドロキシアパタイト」又は「ハイドロキシアパタイト」の語は,一般消費者の間でも,歯や骨を構成する成分であることはある 程度知られるようになったこと,②「ハイドロキシアパタイト」は,Ca10(PO4)6(OH)2 の化学式で表される,リン酸カルシウムの一種であること,③「アパタイト」は,M10(ZO4)6X2の組成をもつ結晶鉱物の総称であり,M,Z及びXには複数の種類の元素が入り得るため,特定の化合物を指すものではなく,「ハイドロキシアパタイト」は,アパタイトの一種(Mがカルシウム(Ca),Zがリン(P),Xが水酸基(OH)のもの)ではあるが,アパタイトそのものを意味するものではないことが認められる。加えて,「アパタイト」の文字は,その称呼から,英単語「appetite」(「本能的欲望,(特に)食欲」)(甲17)又は「apati te」(「燐灰石。ハイドロキシアパタイト」)(甲16)に通じるもの である。
以上の認定事実に照らすと,前記(ア)の冒頭掲記の証拠(甲23ないし205)から,「アパタイト」の語が,本件商標の登録査定時において,取引者,需要者の間で,歯の再石灰化を促し美白効果のある「ハイドロキシアパタイト」又は光触媒応用製品に適用可能な「アパタイト」を意味する語として,一般的に広く認識されていたものと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。かえって,「アパタイト」は,M10(ZO4)6X2の組成をもつ結晶鉱物の総称であって,具体的な特定の物質を表するものではなく,このことからしても「アパタイト」が特定の意味合いを理解させるものとはいえない。
したがって,原告の前記主張は,採用することができない。
ウ 前記ア及びイによれば,本件商標は,「真珠」の意味を有する「パール」 の文字と,特定の意味合いを理解させるものとはいえない「アパタイト」の文字とからなる結合商標であり,その構成全体から,特定の意味合いを認識することはできないから,特定の商品の品質を直接的に表示するものと認めることはできない。
したがって,これと同旨の本件審決の認定に誤りはない。