SAPIX事件

裁判所 東京地裁
判決日 2018年05月11日
事件名 SAPIX事件
キーワード 不競法商品等表示の「使用」
着目点 原告運営の大手学習塾であるSAPIXに通う生徒のために、SAPIXのテスト解説のライブ配信や復習用教材の作成等を行っている被告(塾)が、被告のホームページでSAPIX/サピックスを使用することが、不競法2条1項1号に該当するか、及び被告が原告の作成したテスト問題を使用する行為が一般不法行為に該当するかを判断した事例
事件番号 平成28年(ワ)第30183号
判決のポイント

争 点  不競法違反及び一般不法行為の成否

裁判所の判断(抜粋)

2 争点(1)(不競法違反の成否)について

(1) 商品等表示の「使用」の有無について

 原告は,不競法2条1項1号にいう「使用」の意義について,自他識別力のある使用といえるかどうかは独立の要件ではなく,営業主体の混同のおそれの有無の判断において考慮すべき要素にすぎないと主張する。しかし,同号は,人の業務に係る商品又は営業(以下「商品等」という。)の表示について,その商品等の出所を表示して自他商品等を識別する機能,その品質を保証する機能及びその顧客吸引力を保護し,事業者間の公正な競争を確保することを趣旨とするものであるから,同号にいう「使用」というためには,単に他人の周知の商品等表示と同一又は類似の表示を商品等に付しているのみならず,その表示が商品等の出所を表示し,自他商品等を識別する機能を果たす態様で用いられていることを要するというべきである。

ア 本件表示1~3

 これを前提として,被告のホームページ上の本件表示1~3について検討するに,前記認定のとおり,被告のホームページには,そのヘッダー部に被告学習塾の名称が表示され,またメインコンテンツ部には「中学受験ドクターのプロ講師による」との記載があるのであるから,同ホームページに掲載されたサービスの提供主体が被告であることは明らかである。

 また,メインコンテンツ部の最上部の囲み枠に「塾別!今週の戦略ポイント」「SAPIX・日能研・四谷早稲アカの授業の要点を毎週解説!」などと記載されていることによれば,被告が原告学習塾のみならず他の大手学習塾の授業の解説を行っていることは容易に理解し得る。

 その上で,本件表示1~3をみると,本件表示1(「SAPIX 8月マンスリー」)は,その表示がされたバナー内の他の記載と併せ考慮すると,被告の行うライブ解説の対象が原告学習塾のマンスリーテストであると理解し得るのであり,その解説の主体が原告又はその子会社等であることを表示するものではなく,またそのように誤認されるおそれがあるとは認められない。

ウ したがって,本件各表示は,いずれも,その表示が商品等の出所を表示し,自他商品等を識別する機能を果たす態様で用いられているということはできないので,不競法2条1項1号の「使用」には該当しない。

2 争点(2)(一般不法行為の成否)について

 原告は,本件における被告の行為は,原告の作成したテスト問題等を不正に使用することにより原告の営業の自由を妨害することを目的とするものであり,自由競争の範囲を逸脱した不公正な行為に当たるので,一般不法行為を構成すると主張する。

 本件においては,被告が原告の著作権を侵害したと認めるに足る証拠はないところ,著作物に係る著作権侵害が認められない場合における当該著作物の利用については,著作権法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないというべきである(最一小判平成23年12月8日民集65巻9号3275頁参照)。

 本件についてみるに,原告は,被告が原告作成に係る問題等を入手し,ライブ配信などの方法でその解説をするのは原告のノウハウにただ乗りするものであると主張するが,大手学習塾に通う生徒やその保護者の求めに応じ,他の学習塾が業としてその補習を行うこと,すなわち,当該大手学習塾の授業内容を理解し,又はその実施するテストの成績を向上させるため,当該大手学習塾の問題や教材を入手し,その解説等を行うとのサービスを提供することは,自由競争の範囲を逸脱するものではなく,そのような営業形態が違法ということはできない。

 また,原告は,被告の行為は原告の営業の自由を妨害し,原告の顧客を奪取することを目的とするものであると主張するが,被告がそのような主観的な意図を有していたことをうかがわせる証拠はない。加えて,被告が原告学習塾の生徒に提供するサービスは,原告学習塾における理解の深化や成績向上等を目的としているのであるから,被告学習塾に通塾する原告学習塾の生徒は原告学習塾における学習を継続することを前提としているものと考えられる。そして,仮に被告の行為により原告のプリバード(個別指導塾)の受講者が減少したとしても,それは大手学習塾の教材や問題の補習というサービス分野における自由競争の範囲内であるというべきである。

 

知財高裁判決の紹介記事

TOP