会計処理装置事件

裁判所 東京地裁
判決日 2017年07月27日
事件名 会計処理装置事件
キーワード 対比判断
着目点 複数のキーワードを総合的に判断して行う処理は、1つのキーワードを用いた処理を規定した構成要件を充足しないと判断された例
事件番号 平成28年(ワ)35763号
判決のポイント

争 点

機械学習により生成したアルゴリズムに基づく仕訳の処理は、優先順位の最も高いキーワードを用いた仕訳を行う本件特許を侵害するか。

裁判所の判断(抜粋)

(1)構成要件13C及び13Eについて

・・・そして,①テーブルとは,「表。一覧表。」(広辞苑第6版)の意味を有することからすると,本件発明13における「対応テーブル」とは,結局,「取引内容の記載に含まれうるキーワードについて対応する勘定科目を対応づけた対応表のデータ」を意味すると解されること,②仮に取引内容に含まれた1つのキーワード以外のキーワードも仕訳に使用するのであれば,「優先順位の最も高いキーワードを選択し,それにより対応テーブルを参照する」ことをあえて規定する意味がなくなるし,「対応テーブル」(取引内容の記載に含まれうるキーワードについて対応する勘定科目を対応づけた対応表のデータ)をどのように参照するかも不明になること,③本件明細書においても,取引内容に含まれた1つのキーワードのみを仕訳に使用する構成以外の構成は一切開示されていないこと,以上の諸点を考慮して,上記構成要件の文言を解釈すると,結局,本件発明13は,「取引内容の記載に複数のキーワードが含まれる場合には,キーワードの優先ルールを適用して,優先順位の最も高いキーワード1つを選び出し,それにより取引内容の記載に含まれうるキーワードについて対応する勘定科目を対応づけた対応テーブル(対応表のデータ)を参照することにより,特定の勘定科目を選択する」という構成のものであると解すべきである。

(2)被告方法について

・・・例えば,本取引⑦において,「商品店舗チケット」の入力に対し勘定科目の推定結果として「仕入高」が出力されているが,「商品店舗チケット」を構成する「商品」,「店舗」及び「チケット」の各単語を入力した場合の出力である「備品・消耗品費」,「福利厚生費」及び「短期借入金」(本取引①ないし③)のいずれとも合致しない。また,入力例③及び④によれば,摘要の入力が同一であっても,出金額やサービスカテゴリーを変更すると,異なる勘定科目の推定結果が出力される例(本取引⑮ないし⑱)が存在することが認められる。

さらに,入力例⑤及び⑥によれば,「鴻働葡賃」というような通常の日本語には存在しない語を入力した場合であっても,何らかの勘定科目の推定結果が出力されていること(本取引⑲ないし㉒)が認められる。

以上のような被告による被告方法の実施結果によれば,原告による被告方法の実施結果を十分考慮しても,被告方法が上記アのとおりの本件発明13における「取引内容の記載に複数のキーワードが含まれる場合には,キーワードの優先ルールを適用して,優先順位の最も高いキーワード1つを選び出し,それにより取引内容の記載に含まれうるキーワードについて対応する勘定科目を対応づけた対応テーブル(対応表のデータ)を参照することにより,特定の勘定科目を選択する」という構成を採用しているとは認めるに足りず,かえって,被告が主張するように,いわゆる機械学習を利用して生成されたアルゴリズムを適用して,入力された取引内容に対応する勘定科目を推測していることが窺われる。

・・・

(3)小括

したがって,被告方法は構成要件13C及び13Eを充足しない。

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